「ここがレーズン火山かぁ」


真っ黒な煙と真っ赤な溶岩が流れるレーズン火山
船を長時間停泊させる事は不可能である為に、エリー達を下ろしたバンエルティア号は別の場所へ行ってしまった

チャットの話ではそれほど広くはないが、活火山の為に何が起きるか分からないという事だった


「そういえば、デュナミス達はワケ有りと言っていたが、どういう意味なんだ?」


先頭を歩くクロエはふとカイル達を見て聞いた

ナナリーが最初に言っていた。カイル達はワケ有りでハロルドの力が必要だと


「わたし達、こことは別の世界から来たんです」

「…は?」


セネルは足を止めてリアラの方へ振り向いた。エリーも驚いてカイル達を見る


「オレ達、実はここに来ようと思ったんじゃなくって…オレ達の世界の“過去”へ行く予定だったんだ」

「過去へ…? そんな事が出来るなんてカイルの世界は凄いね」


カイルの説明にエリーは素直に言う

過去へ行けるなんて、発展しているという事だろう


「いや、誰でも出来るって事じゃなくて…リアラが持っているレンズっていうもので、それが可能なんだけど…」

「ここへ来て何も反応しなくなってしまって…帰れなくなったの」


カイルに続けてリアラは言う

リアラが身に付けているペンダントがカイルのいう“レンズ”なのだろう


「皆、魔物だ!」


セネルが魔物─オタレドとレドゲコを見つけた

全員が武器を構え、エリーとリアラとナナリーは少し下がる
エリーとリアラは詠唱を始めた


「アグリゲットシャープ!」


エリーの魔法が発動し、セネル達前衛の攻撃力を上げる


「魔神拳!」

「魔神剣!」

「蒼破刃!」


セネル・クロエ・カイルはそれぞれ魔物に攻撃する


「牙連閃!」


ナナリーがリアラの援助をし、その瞬間リアラの術が発動する


「アクアスパイク!」


術が命中し、最後の魔物が倒れる
それを見てエリー達は武器を戻す

そして再びハロルドを探す為に歩き出した



「ハロルドって人は何でわざわざこんな暑い所にバカンスしに来たのかな」


歩きながらふとエリーが言った

ナナリーへの絵葉書にはバカンスに行くと書いていた(エリー達には読めなかったが)


「あいつが普通に海水浴を楽しんでるなんて全然想像もつかないけど。きっと何か意図があるんだと思うよ。実験とか、データ採取とか」

「もしかして、かなり凄い科学者なのか?」

「あたし達の国では有名人だよ。色んな意味で」

「色んな意味?」

「会えば分かるさ」


ナナリーはそれ以上教えてはくれなかった

エリー達は黙々と歩き続ける

カイルが英雄を目指している事、リアラは“聖女”と呼ばれている事、色んな話を聞いた


「あそこに人がいるぞ」


クロエが前方を指差す

橋のような道の向こうに、ピンク髪の女性が座りこんでいた


「ハロルド!」


ナナリーが女性─ハロルドに駆け寄る。エリー達もそれに続く


「あれっ、ナナリーじゃない。奇遇ねぇ、ピクニック?」


ハロルドは立ち上がってナナリーに笑顔で挨拶をする


「あんたねぇ…。誰がこんな所でピクニックするっての」

「それは固定観念というものよ。お弁当もって楽しくお散歩すれば、ピクニックの定義を満たす事になるわ」


ナナリーは呆れるもハロルドはそれを軽くスルーして笑顔で話を続ける


「ピクニックはとっとと切り上げてもらえるかい?」

「イヤよっ。ここでサウナも兼ねて実験するんだから。これからマグマを核蒸留するんだもん」


エリー達は余計な事を言わないように黙って成り行きを見守る


「あんたには、あたしもこの子等も用がたっぷりあるんだよ」


ナナリーはエリー達を示す
カイルとリアラはハロルドに近付く


「オレ達、どうしてもハロルド博士の協力が必要なんです」

「…協力って、異世界から来たけど帰れなくなって、どうにかしろとかそーゆーコト?」

「どうしてわたし達が異世界から来たって…」

「あら、当たっちゃった? 1番あり得ない選択肢を言ったつもりなんだけど。それで、そちらさんは私に何の用?」


カイルとリアラを見てハロルドは笑う。そしてエリー達に聞く


「あたし達は、ショー・コーロンの依頼で貴女を探しに来ました」

「あんたが以前ギルドで請け負った依頼の苦情がわんさか届いてるんだよ。ショー・コーロンのヤツがカンカンでね。連れ戻して責任を取らせたいんだって」


エリーの補足をナナリーがする

ハロルドは自分が何をしたのか分かっていない表情でエリー達を見た
ナナリーはそれに対して盛大に溜め息を吐いた


「とにかく、引きずってでも連れて帰るからね! あんた達!!」


ナナリーに睨まれカイルとセネルはハロルドの元へ走る

カイルは力を貸して貰おうとハロルドを説得する。セネルも依頼である為にカイルに協力していた


「はいはい、わかったわよ。その“異世界”うんぬんっての、結構面白そうだしね」

「面白い…のか?」


ハロルドは楽しそうに笑う。クロエは思わず苦笑いしてしまった
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