船の改造は思ったより早く終わった


「体の方はもう良いのですか?」


フィオが機関室に顔を出すとチャットが声を掛けてくれた


「ああ。心配かけてごめんね」


フィオは軽く謝った
本当に皆が心配してくれていたようだ


「貴方が噂のフィオ?」


背後から声が聞こえた
フィオが後ろを向くと銀髪の女性─リフィルがいた


「あ、えと。噂ってどういう……」

「空から降って来た凄腕の剣士。そう聞いてるわ」


一体誰がそんな話をしたのだろうか
予想は大体出来るのだが


「リフィルさん、ペリー鉱山へ行くんですか?」

「ええ。弟のジーニアスも連れて行くのだけど、あと2人程護衛が欲しいの」


チャットとリフィルの視線がフィオに向いた
2人の言いたい事は理解出来た


「分かった、僕が行くよ。でも後1人は?」

「そうですね…。今手が空いているのは何人かいますが」


チャットはパラパラと帳簿を捲った


「フィオ、もういいのか?」


機関室に入って来たカイウスがフィオに声を掛けた

このタイミングで来るのは運が良いのか悪いのか分からない


「カイウスさんは特に仕事の予定はありませんよね?」

「あ、ああ、無いけど…」


恐らくカイウスは、嫌な予感を感じているだろう


「では、カイウスさんもリフィルさんの護衛をお願いします」

「り、了解」


チャットの笑顔にカイウスは苦笑いして返した



*****

ペリー鉱山に到着した4人は、奥にある外へ開けた場所を目指した


「そういえば、自己紹介をしてなかったよね。ボクはジーニアス」


リフィルの弟─ジーニアスが手を差し出す
フィオは不思議な気持ちでジーニアスの手を握った


「今回はモルモと一緒じゃないんだな」


カイウスが思い出したように言った

ずっと一緒に居たのに、今日は一緒ではないのが気になったようだ


「うん。エリーやカノンノ達と買い物だってさ」

「ああ、確かルビアも行くって言ってたな」


フィオとカイウスが話していると、通路の隙間からバットが現れた

フィオとカイウスは剣を抜き、リフィルとジーニアスは詠唱を始めた

バットは数匹いたが、フィオとカイウスで半分倒し、リフィルとジーニアスで残り半分を倒した


「噂通りの腕前ね」

「ホント、凄いよ」


リフィルとジーニアスはフィオを褒める
フィオは苦笑いしつつ、否定した


「一度手合わせしたいな」

「ま、その内ね」


カイウスの申し出にも簡単に返した


「あ、ここだね」


ジーニアスが開けた場所を指差した
確かに外を眺められる絶好の場所だ


「アレの中にラルヴァがあるのか?」


設置された機械を見てカイウスが尋ねた
リフィルは軽く頷いた。


「恐らくね。まだ始まっていないようで良かったわ」


4人は並んで外を眺めた


「どういう実験が行われるの?」

「爆破実験らしいわ。見学者も多いみたいだし、派手にやるのではなくて?」


機械の周りに集まった人々を見て、リフィルはそう答えた
ラルヴァが認知され始めた証拠らしい


「………」

「どうしたんだ、フィオ?」

「気分でも悪いの?」


カイウスとジーニアスが心配そうにフィオに声を掛けた
フィオは何でもない、と首を振った

丁度、実験開始の合図が鳴った

機械からエネルギーが漏れて近くの山に激突する
その瞬間、エネルギーがぶつかった山が消滅していた


「これが…ラルヴァ?」

「山が消えるなんて…」

「もしこれが悪用されれば…」


3人はそれぞれに呟いた
だが、フィオはそれどころではなかった

大地の一部である山が消えた
それが意味するのは……


「フィオ!?」


カイウスがフィオの異変に気付いた
座り込んだフィオの顔色が悪い


「真っ青だよ。どうしよう、姉さん!」


うろたえるジーニアスにリフィルは落ち着くよう促した


「直ぐに船に戻りましょう」


カイウスがフィオに肩を貸し、急いでバンエルティア号に向かった





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