《恋愛初心者》
#03_これからのふたり:03



 塾は、週に三回。

 三国くんと一時間程ファストフードでお喋りして、そこから徒歩で二十分位の道のりを、倍の時間をかけてゆっくり歩く。

 本当は地下鉄に乗ればすぐウチに着くことを、あたしも三国くんも知っているけれど、敢えて歩くことを選択していた。

 雨の日も。風の日も。

 手を繋いだり、触れ合ったりすることはないけれど。

 どれだけ寒くても、三国くんと歩くその時間を、心待ちにしているあたしがいる。


「…今度、さ、どっか、行かねぇ?」


 それは紛れもなく、デートのお誘い。

 あたしだって、そのくらい判る。


「どっか、ってかさ、連れて行きてぇとこ、あるんだ」


 ドキドキ、する。

 デート、なんて、したことないもの。


「どこ?」

「行くまで秘密。今週の日曜とか、どうよ」

「…うん」


 連れて行きたい、と、三国くんが思ってくれた場所がどんなところなのか、知りたい。

 あたしをもっと知りたい、と言ってくれた三国くんが選んだ場所を、知りたいと。

 制服じゃない、普段の三国くんを、あたしはもっと知りたくなっていた。



 三国くんと過ごす時間は、どんどん増えていった。


 塾の帰り道。

 放課後。

 休み時間。


 結衣子がいても普通に話しかけてくる三国くんに、江坂くんがあたしを見て結衣子を思い出しやしないかとハラハラするのと同じように、結衣子にもハラハラするけれど、結衣子にはそんな感情は皆無のようだった。


 三国くんは、家に帰ってからも、電話やメールをくれる。

 いつも絶妙な、計算されているかのように、少し物足りないと思えるタイミングで。


 ――まずは、堂島が俺を知りたくなるように、仕向けるつもり


 そう宣言されたままに、あたしは気がつけば常に三国くんのメールを待っていたし、三国くんのことばかり、考えるようになっていた。

 だから。

 日曜のデートは、すごく楽しみにしていた。








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