《恋愛初心者》 #02_幸福になれる彼女:01 「…ウザい」 中津と付き合うようになって浮かれていた江坂が、久々にウチに来た。 と、思ったら。 「16回目」 「何が」 「お前のため息」 何なんだよ、あんな色ボケした顔してたくせに。 「うまくいってねぇの? 中津と」 「…いってねぇこともねぇんだけど、いってねぇと言えばいってねぇような」 そう言って、17回目のため息をつく。 「何」 「何つーか、空回り、してる」 「は?」 「…って、思うんだよ最近」 あぁ、なるほど、ね。 ってか、仕方ねぇんじゃね? 相手は中津だし。 …とは、言わないでおいた。 「多少は判ってたことじゃねぇの?」 オブラートに包んでやる、優しい俺。 「ま、そうなんだけどさー。いざ付き合ってみっと、こう、欲が出るっつーの?」 「贅沢な悩み抱えやがって」 ひとりもんの俺に、そういう相談すんのかよ。 「そういう中津を好きになったのはお前だろ? 自分でなんとかしろよ」 「まぁ、な…」 あ、18回目。 「結衣子は別に、俺をどうとも思ってねぇんだろうなぁ」 それでもいいから付き合ってくれ、って、中津を押し切ったのはお前だろうが。 「今日なんかも、さりげなーく堂島に励まされたりしてさぁ」 19回目。 もう、いい加減カウントすんのやめた。こっちまで気が滅入る。 「結衣子も少しくらい、堂島みたいだったらなぁ」 [*]prev | next[#] book_top |