《桜、咲く》
#02_男を怖がる女:01




「ちょっと、鈴!」


 教室に入るなり、めぐちゃんが駆け寄ってきた。


「めぐちゃん。おはよう」

「おはようじゃないわよ。何、今朝の電車。一緒にいたの、東高の森川くんでしょ」


 和紀くん、森川、だっけ…。

 ていうか、めぐちゃん、和紀くんのこと知ってるんだ。


「うん、千裕くんの友だちみたいで」

「ハァ…。千裕さんといい、森川くんといい、どうして男嫌いの鈴の周りにいい男が集まるのかしら」


 もったいない、と、めぐちゃんはため息をつく。

 めぐちゃん、彼氏いるのに。


「ねぇ、めぐちゃん、和紀くんのこと知ってるの? 有名な人なの?」

「有名っていうか、うーん…」


 めぐちゃんが言うには。

 誘えば断られないけど、飽きたらポイ。来る者拒まず。誰にも本気にならないから、深入りして辛くなるのは女の子の方。当然、何かあっても追いかけてもくれないし、優しく大事にしてくれる訳でもない。彼の携帯番号とアドレスは教えてもらえない。

 …という、噂。


「なのに、ハマっちゃう子、多いんだ」

「…判んないな、そういうの」


 ホントにそうなんだろうか。

 真面目そうには見えなかったけど、でもそんなドライな人にも見えなかった。

 噂どおりだとしたら、千裕くんの友だちにはなってない気がする。


「あたしが判んないのは、鈴だよ。森川くん、一緒にいても平気なの?」


 一番危なそうなタイプなのにね、と、首を傾げる。


「平気っていうか、…あれ。そうだね、怖くなかったかも」

「ちょっとぉ…。初めて好きになった相手がチャラ男でボロボロにされて捨てられて泣く、とかやだよ?」

「めぐちゃん、話が飛躍しすぎだよ」




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