《蛍の群れ》 #04_エピローグ:01 「じゃあ、おばあちゃんはおじいちゃんとしか、付き合ったことないの!?」 あたしを“望月未来”にしてくれた臣人さんは、蛍、という名のひとり娘を授けてくれた。 蛍が結婚して、翌年産まれたのが、光。 光はもう、高校生になった。 「そうねぇ。他の人とお付き合いするなんて、考えたこともなかったわ」 「ふぅん…」 臣人さんとの馴れ初めを、とせがまれて、アルバムをめくりながら、出会いから思い出しつつ話して聞かせると、光は思いの外、目を輝かせていて。 そして頬杖の中で、ひとつ大きくため息を吐き出した。 「…あたしもそういうのがいいなぁ」 「ん?」 「おじいちゃんがおばあちゃんにしたみたいに。ずーっとあたしを守ってくれる人と出会いたい」 光を釘付けにしたアルバムの中には、何十年分もの想い出が詰まっている。 どこを開いてみても、隣にはいつも臣人さんがいた。 それが、当たり前だと思っていた。 「光も出会えるわよ。必ずね」 まだ恋に恋しているような、憧れと恋の境目を彷徨うような年頃の光には、ピンとこないだろうか。 それでも、思い起こしてみれば、臣人さんと出会ったのは、今の光の歳だった。 光にそういう相手が見つかるのも、遠くない未来なのかもしれない。 今日は、臣人さんの三回忌法要。 当たり前に隣にいた臣人さんが天に召されてから、もうそんなに経っていたのだと、あらためて思い知らされる。 ――俺がずっと、守るから いつも、そう言って抱き締めてくれた。 それはいくつになっても変わらなくて、おかげであたしは、いつまでも少女のままでいられた。 「…嘘つきね」 [*]prev | next[#] book_top |