『アルミン、歩けるから降ろして!』
「ダメだ。そんなに腫れているのに歩いたりなんかしたらもっと悪化するよ」
『アルミンがわたしの体重で押しつぶされるのに比べたら、悪化させるほうが何倍もマシだよ』

だから降ろして、と僕の背中で暴れる玲。玲が怪我をしたのはついさっきのこと。エレン、ミカサ、玲、僕のいつものメンバーで遊んでいたときに、玲が突然何もないところで転んで怪我をしたのだ。玲は大丈夫だと言っていたけれど、顔は真っ青になっていて右手がぎゅっとスカートを掴んでいた。スカートを掴むのは、玲が無理をしているときの癖だ。それに気がつかない僕らじゃない。とりあえず玲を家まで連れて行こうということになって、エレンとミカサが玲を背負うと言ってくれたのだが僕はそれを断った。玲に関することだけは誰にも譲りたくなかったから。それから、僕がばたばたと抵抗する玲を背負って歩き出して冒頭の会話へと至る。僕は確かにエレンやミカサほど身長は高くないけれど、玲の体重で押しつぶされるほど弱くはないつもりだ。僕らの前を進むエレンとミカサが心配そうにこちらを振り返る。

「疲れたら交代してやるからすぐに言えよ」
「ありがとう、エレン。僕は大丈夫だから」
「玲、脚のほうは大丈夫?もうすぐで家に着くから」
『みんな、ごめんね。せっかく遊んでたのに』

申し訳なさそうにしょぼんとしている玲の姿がその声から簡単に想像できた。

『アルミンごめんね。わたし、いつもアルミンに迷惑掛けっぱなしだね。本当にいつもありがとう。大好きだよ』


そう言って僕の首に顔を埋める玲。風に乗って、やさしい石鹸の香りがした。玲が使っているシャンプーの香りだと気がついた途端なんだか僕は急に恥ずかしくなって黙り込んでしまった。きっと今の僕の顔は真っ赤になっているに違いない。


もうずっときみにしてる


(小さい頃から、今日も明日も)
(これからもずっと)


2013.6.11