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 秘密の花園(後日談)

公安局刑事課では激務が続いているためか

監視官、執行官問わず

今日も医務室を訪れる人が多かった。




「いやー。ここは天国だね!快適、快適」

『縢くん、ここは医務室なんだけど』

「あれ?そうだっけ」




居心地良すぎて忘れてたとけらけら笑う縢くん。
その隣では狡噛くんが持ってきた資料に目を通していて
その隣に座っている朱ちゃんはそわそわと入り口のほうを気にしている。





元気なのにこの人たちは何故ここに来た




心の底から思った。

しかし、ここにいることで少しでも休めるならいいかと諦める。




本当の病人が来たら出ていってもらえばいいか




机に座りながら、わたしは中断させていた資料作りに取りかかる。




「結ちゃーん」

『どうした、縢くん』

「ギノさんって、いつもここに来てなにやってんの?」

「ちょ!?縢くん!いきなりすぎだよ」

『宜野座くん?』





いつもコーヒー飲んで愚痴をこぼしていくだけだよ、と答えれば

ソファーに座っている3人はぽかんとしたあといきなり笑い始めた。

朱ちゃんも一緒に笑うなんて珍しい。





「な?俺の言った通りだろ」

「違いますよ狡噛さん。

宜野座さんはヘタレじゃなくて慎重派なんですよ」

「どっちみちギノさんはヘタレでいいんじゃね」





いったい何のことかと思いながら話を聞いていると

静かに入り口の扉が開いたことに気がついた。

3人は扉を背中を向ける形で座っているので気がついていない。

あちゃー、とわたしは心の中で苦笑するしかなかった。





「誰がヘタレなのか教えてもらおうか。縢」





さっきまでのほのぼのとした空気が、

突然の第三者の登場によって急に冷たくなった。




名前を呼ばれた縢くんは、笑ったまま固まっている。

狡噛くんは持っていた資料に視線を戻して知らん顔

朱ちゃんはあたふたしながらことの成り行きを見守っている。





「ギノ、」

「なんだ、狡噛」

「お前、そのままだと誰かに白川を取られるぞ」

「なっ!?余計なお世話だ」





顔を真っ赤にして狡噛くんに怒鳴る宜野座くん。

というか狡噛くん。

なぜ、わたしの名前を出した。





恒例のふたりの口論の様子をしばらく眺めていると、流石にまずいと思ったのか

朱ちゃんと縢くんが狡噛くんを引きずって医務室から出て行った。

もちろん医務室にいるのはわたしと宜野座くんのふたりだけ。





『一係は賑やかで楽しそうだね』

「ちゃんと仕事をしてくれれば何も文句はないんだがな」





ため息をついてソファーに座った宜野座くんにコーヒーを渡し、

わたしもココアを一口飲む。





「さっきの、」

『さっき?』

「さっきの、狡噛とのやり取りはすべて忘れてくれ」




宜野座くんはなぜか耳まで真っ赤になっている。

さっきのやり取り...。

正直言って、何のことで言い争っていたのかなんて覚えていない。



書類やら薬をぐちゃぐちゃにされないかという心配ばかりしていたから。

とりあえずここは頷いておけばいいかと思って、はいはいと返事をしておいた。



今日も公安局の医務室は平和です









密の花園(後日談)







「ありゃ、相当時間かかるぞ」

「俺、ギノさんのこと心配になってきたんだけど」


2013.3.20
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秘密の花園の後日談で書かせていただきました。
一係のみんなに愛される宜野座さんを目指したんですけど撃沈しました。
夢主が鈍感なので苦労していると思います、宜野座さん。
少しでもリクエストにお応えできていたらなと思います。
藤堂