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 結局はひとりぼっち

『聖護くん、やめて!

これ以上動いたら死んじゃうよ』



ハイパーオーツ畑の中をひたすらわたしの手を引いて進む聖護くん。

先程の狡噛との戦闘で負傷しせいで、彼の白い服は紅く染まっている。




はやく応急手当てをしたいのに聖護くんはわたしの言葉が届いていないのか、

息を切らしながら前へ前へと進み続けるばかりで止まってくれない。




わたしはただ、聖護くんの手を握り返して彼について行くことしかできなかった。





***

ハイパーオーツ畑を抜けて、畑を見渡せるところまで来たところで聖護くんが進むのをやめてわたしの手を離した。




『はやく手当しよう?』



膝をついた聖護くんの前にまわって彼の顔を見る。

聖護くんの綺麗な白い肌に赤い血が流れていて、

わたしは、はやく手当をしなければと自分の鞄の中を探る



「結、」

『なに』

「もういいんだ」



何がもういいの?と聞こうと思って顔をあげようとしたけれどできなかった。



聖護くんがわたしの頭に手を添えてそれ以上、顔をあげられないようにしたからだ。


そのままゆっくりと彼のほうに抱き寄せられて、

目の前に広がるのは白色と

侵略する赤色。



「今は、こうしていたい」



弱々しくわたしを抱きしめる聖護くんの手が微かに震えているような気がした。

目の前にある彼の服を握りしめる。





しばらくして、聖護くんがわたしを抱きしめる腕を緩めて上体を起こしたかと思えば

突然、後ろに突き飛ばされた。

突き飛ばされるなんて思っていなかったわたしは簡単にバランスを失ってそのまま後ろに倒れる。

その途中でわたしは目を見開いた。



『狡噛、慎...也』



聖護くんの後ろで拳銃を向けている彼を発見したから。

逃げてと叫びたいのに思ったように声がでない。



どうして聖護くんは、もうすべてを諦めたような顔をしてるの

貴方にそんな顔は似合わないよ




背中に広がる痛みに耐えながら立ち上がり、

急いで聖護くんのところに駆け寄る。




だけど、わたしの手が届く前に

銃声が鳴り響き、

聖護くんがゆっくりと崩れるようにわたしの方に倒れた。





嘘だ

彼がこんなところで死ぬはずがないもの





恐る恐る聖護くんのそばに膝をついて、彼の頬に手を添える。



『ねぇ、起きてよ聖護くん』

『ずっとわたしのそばにいるって言ったじゃないの』




話しかけても聖護くんからの返事はなくて



『嘘つきは、嫌いだよ』



彼の身体がゆっくりと体温を失っていくだけだった







局はひとりぼっち







(お願いだから目をあけて、)

(愛してるって、また囁いてよ)


2013.3.30
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イツキ様リクエストありがとうございました。
遅くなってしまってすみません(>_<)
最終回を見て槙島ショックになりまして、最近まで放心状態でした(笑
リクエストに応えられた内容になっているかかなり不安です。
今回も相変わらずの稚拙な文章になってしまい申し訳ないです(>_<)
PSYCHO-PASSの続編があることを期待したいですね。
最後に、素敵なリクエストをありがとうございました!
藤堂