『寒い』

くしゅんとくしゃみをした後、わたしは小さく呟く。現在、現場検証の真っ最中。久しぶりに宜野座くんからお許しをもらって外でのお仕事に出てきたはいいが、嬉しさのあまり上着を忘れてきてしまった。大丈夫ですか?と同じく寒そうに身体を摩っている朱ちゃん。彼女はコートを着ているが、やはり寒そうだ。朱ちゃんも寒い中、頑張っているんだ。先輩の私がこんなところで音を上げるわけにはいかない。気合いを入れ直して再び仕事に取りかかった。


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「こっちはなんとか終わりましたね」
『朱ちゃんのおかげだよ。ありがとう』
「そ、そんな!私の方こそ、瑠璃さんに助けられてばっかりでしたよ」

朱ちゃんとそんな会話をしながらみんなのところに戻る。すると、他のみんなの仕事もだいたい終わったらしく、私たちを待っていた。

「遅くなってしまってすみません」
『遅くなってごめんね』

みんなの和の中に入ると、宜野座くんがぎょっとしたようにこちらを見た。

「まさか、瑠璃。ずっとその格好でいたのか!?」
『うん。そうだよ』
「この、馬鹿!」

物凄い形相で宜野座くんがやってきたかと思えば、次の瞬間、視界が黒色で埋めつくされた。あ。これ、宜野座くんのコートだ。

「これを着ておけ」
『でも、宜野座くんが寒いよ』
「俺は着込んでいるから大丈夫だ」

ちゃんと着ろと言われ、しぶしぶ袖を通す。うん。わたしと宜野座くんじゃ身長差がありすぎてすごくダボダボだ。

「うわ。なんか萌えるわ」

遠くで縢くんが何か行っているが気にしないことにしよう。私が着たのを見届けた宜野座くんは、何故か顔を紅くしながらコートの前をくいっと閉めた。どうしよう。今日の宜野座くん、なんか可愛い。


くたっていいじゃないか


「ギノ、あれは狙ってやったのか?」
「ギノさんってああいうのが好きなんですか?俺は好きっすよ!どストライク!」
「狡噛、縢。お前らとりあえず黙れ」


2013.2.8