『狡噛くんは指先で、縢くんは腰だと思うんだ』

隣に座る彼女は思い出したかのように突然呟いた。瑠璃は以前からこんな風にいきなり何かし始める癖があった。あるときはお菓子作りをし始めたり、またあるときは泣き始めたり本当にいろいろやり始める。彼女の思考は何年一緒にいても理解しきれないものばかりだ。

「いきなり何の話だ」
『ん?異性のなんかこう、ぐっとくるところというか、個人的に好きな仕草みたいな?』

瑠璃は抱えていたクッションを抱え直して顔を埋める。

『狡噛くんはタバコ吸ってたり、ドミネーター持ってるときの指先がかっこいいなって思って。縢くんはなんかこうね、あの腰のラインがたまらないんだよね...って、宜野座くん?』
「なんだ」
『怒ってる?』

怒ってる?当たり前だ。今は2人きりで居られる貴重な時間なのに、他の男の名前を出されて不機嫌にならないわけがないだろ。

「怒っていない」

とは言ってみるものの、この声の低さで話していたら怒っていると言っているようなものだ。先ほどからこちらの様子を申し訳なさそうに伺う瑠璃。下から恐る恐る見上げてくるその姿を愛おしく思う反面、もっといじめたいと思ってしまう。

『宜野座くん』
「...」
『宜野座くん!』

考え込んでしまっていたせいで瑠璃に呼ばれていることに気がつかなかった。

「っ!?どうした」
『あのね、』

そこで彼女は言葉を切った。それから瑠璃はそっと俺の耳元に近づいて残りの言葉を言うと、あっという間に離れていった。しばらく部屋には沈黙が続き、お互いに顔を紅くして俯いているふたりがそこにいた。


ってもいいじゃないか


『本人に面と向かって言うのはとっても恥ずかしいんだけどね』
『宜野座くんは、仕草ひとつひとつが色っぽいからいつも困ってる、かな?』
「なっ!?」


2013.3.6