私は突然届いたドレスにただ頭を傾げるだけだった。

「メルのドレス可愛いー!これでレギュラスもメロメロじゃない!」
『は?...めろめろ?』
「もう踊る相手が決まってる人はいいわよね。私なんてまだ決まってないんだから」

一緒に朝食をとっていた相部屋の子達が私を置いてあれこれと進めていく会話。私はフォークを握ったままその様子を見守ることしかできない。はて、彼女たちは何の話をしているのだろうか。

「それにしてもメルのドレス、ギリギリに届いたのね。ダンスパーティーは明日だっていうのに」

ん?

「メルのことだから御両親に連絡するの遅かったんじゃない?」

間に合ってよかったね、とスリザリンの中では穏健派な彼女たちの視線が私に注がれる。貴女たちの会話で初めて知りましたなんて怖くて言えない。あ、えと...と言葉を濁していると、「まさか...」と誰かが呟いたのが聞こえた。これはもう正直に話すしかない。

『私、ダンスパーティーが明日あるって今知ったよ...あははは』

わたしが苦笑いすると、相部屋の子達がいっせいに「はぁぁぁぁ!?」と女の子らしくない大声をあげた。

「メル、寮監先生の話聞いてなかったの!?」
『う、うん。たぶんそのとき、魔法薬学のことばっかり考えてたんだと思う』
「この前のダンスの特別授業のとき、何も疑問に思わなかったわけ?」
『先生もたまに踊りたくなるのかなぁ程度に思ってた』

こりゃダメだといった様子でため息をつく相部屋の子達。なんかごめん。

「でも、レギュラスがメルにダンスパーティーの話してないのもあれじゃない?」
「そうね。まさかメルに内緒で他の子を誘ってたりして...って、痛っ!?」
「ちょっと!そんなこと言うのやめなさい!!メルがショック受けて固まっちゃったじゃないの」
「え、嘘嘘!嘘だよメル!例えばの話だって!おーい、メルさーん。こっちの世界に戻っておいでー!」


真夜中への招待状


『レギュラス見つけられない。どうしよう。私、避けられてるのかな』
「考えすぎだよ。ほら、メルの大好きなお菓子あげるから元気出して」
『...い、いらない』
「メル。貴女ちょっと今、心が動いたでしょ」


2013.9.3