「メル、これは…」
『はっぴーばれんたいん!レギュラス』
目の前には誰の誕生日だと聞きたくなるような大きなチョコレートケーキ。しかも、3段ケーキときた。ケーキの隣ではメルがドヤ顔でこちらを見ている。でも、ちょっと待て。
「メルは僕が食べれないことくらい知ってますよね?」
『うん。知ってる』
記憶でしかない僕が食べれないのを知っていて、なぜ作った?
『受け取ってくれないの?』
今にも泣き出しそうな顔でこちらを見るメル。そばにいたクリーチャーがおろおろとしている。そんなふたりを見て思わずため息をひとつ。
「気持ちは有難く受け取らせてもらいますから泣かないでください」
ハンカチでぐいぐいと涙を拭いてやると、痛いとメルが訴えてきた。
「このケーキどうするつもりだったんですか?まさかノープランだったわけではないでしょう」
『さすがレギュラス!私のことをよく分かってるね!』
さっきまでの泣きそうな顔はなんだったのかと聞きたくなるほどの笑顔になった彼女。
『レギュラスにあげたら、レギュラスの代わりに私とクリーチャーで食べるつもりだったの』
「僕に、というよりも自分への贈り物になってるじゃないですか」
メルらしい行動に思わず笑ってしまう。それを見たふたりはなぜかぽかんとした表情で固まった。いったいどうした。
『クリーチャー、レギュラスが笑ってくれたよ!』
「はい!メル様、レギュラス様が微笑まれました!」
嬉しそうにハイタッチを始めるふたり。本当にどうしたんだ。
『クリーチャーとね!今日、レギュラスを笑わせようって言ってたの!ね?クリーチャー』
「はい。最近のレギュラス様はどこか疲れた顔をされていたので」
まさかのことに驚いた。自分では上手く隠せていたと思っていたのに。なんだか必死に隠してきた自分が馬鹿みたいだ。だけど、なんだか嬉しさを感じる。とりあえずふたりにありがとう、と言っておこうか。
幸せな日々を
『レギュラス大好き!』
「メル、飛びつこうとしないでください!貴女、壁にぶつかりますよ」
2013.2.15
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