なんだかね、うん、なんだかね、
浜ちゃん、こう見えても男の子だったんだよね、うん、今更ね。
今俺の目の前ですやすやと、あどけない寝顔を見せつけながら夢の国へと旅立ってるこの女王様もとい孝介くんは、なんということでしょうかお風呂上がりでありまして、どうしたものでしょうかその細く白い・・・・・・いや、日焼けしてるから黒いんだけど、そんな首筋ががっつり俺のほうに向いているのでありまして、その上おまけに頬は上気していやまあうんお風呂上がりだから当たり前なだけどそんな感じで赤く染まってて、要するに一言で言うなれば超かわいい、とそうなる次第でございます。

なんだかなぁ。・・・・・・なんだかなぁ。

そういえば狼って、犬が進化して生まれたんだよね。人間が猿から進化したみたいに、犬が進化して狼が生まれたんだよね。確かそう。違ったかな。いや、あってる。はず。たぶん。
今の俺は犬です。つまり狼に進化する余地がある。
つまり・・・・・・狼になれる。あれ、繰り返した意味がn(ry


「いつも俺は頑張ってるんだからご褒美もらってもいいよね」


いただきます、そう小さく呟いてから、俺はそーっと泉に手を伸ばす。
ごめんほんと、疲れてるだろうに、ほんとごめん、節操無い犬でごめん、でも浜ちゃん今から進化する、狼になる、かわいい山羊さんたる泉くんを食べちゃう悪い狼さんになる。でも恋人だもの、いいじゃない。
そんな意味不明の事を頭ん中で考えつつ、心の隅っこのほうで良心が痛まない程度に謝罪しつつ、手を伸ばすのはやめない。そんな浜ちゃんは、今は悪い狼さん。

「・・・・・・・・・・」

・・・・・・と、思ってたら。
あれー、いつからこんなことになってたんだろう、泉くんのお目々、ぱっちり開いてました。大きなくりくりした瞳は、完璧に俺を捕らえてました。
泉の目はキレイだから、目の前にいる俺の姿も、鏡みたいにきれいに映る。泉の瞳に映ってる自分の顔があまりにもキモくてちょっと泣きそうになった。

「・・・・・・なに、してんの」

寝起きでちょっとかすれた声がまた少しだけ俺の本能的な何かを刺激してきたけれど、泉の目が笑ってない事に気がついてそれも少し冷めた。
俺が今からどうゆうことしようとしてたのかは頭のいい泉はすぐに気付いただろうし、いや、頭よくなくても俺の性格知ってる奴ならすぐにひらめくだろうけど、泉はちょっと不機嫌みたいだ。
泉は、こういうことを嫌う。ちゃんと、そういうのは、雰囲気を大事にしたいみたいで。寝てる隙に無理やり、ってのがいや、みたいで。
あー、きっと、怒られるんだろうな、そう思ったのに。

「・・・・・・やめんの?」
「え?」
「・・・・・・別に、いい、けど」
「え、っと?泉?」
「今日は、ゆるす」

何度も言わせんじゃねーよ、そうぶっきらぼうに言いながらも、風呂の火照りとは別のことが原因で桜色に色づいたその頬は、いつもの女王様然とした泉のそれとは大いに異なっていて、幼く見えた。


「そろそろ、犬から狼になるけど」


そういうと泉は一瞬だけ目を丸くしたけど、すぐにいつものあの余裕の笑みをかまして、


「臨むところだっつーの」


そんなことを言った。




そろそろ犬から狼になるけど

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20110325 ちさと


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