浜ちゃんは犬です。わんころです。
ごしゅじんさまってか、女王様な孝介くんに、今日も尽くすのです。
のどが渇いてるようなら麦茶。おなかがすいてるようなら揚げたてコロッケ。暇そうなら変顔してやるし英語がわかんなかったら丁寧にティーチング。
今日の俺もいいわんこっぷり。きっと合格。世界わんこ選手権で優勝間違いなし。そんなのあるのか。もしかしたらあるかも。

「はまだ、つかれた、マッサージ」

今日も孝介くんは部活でお疲れ。ほんとによくやってると思う。みんなついてってんだからすごい。浜ちゃんもう無理。一日付き合うだけでヘトヘトだもん。普通、甲子園で優勝するようなとこって、入部当初は部員がわんさかいるけどだんだん減ってって、最終的に10人とかになるんじゃないっけ。そんな話をどっかで聞いたぞ。それなのに西浦は、入部当初から10人だけだったし(新設だし)、しかも甲子園優勝を目指してバリバリ練習してんのに誰もくじけない。まじすごい。浜ちゃん感動だわ。

「はまだー」

と、孝介くんのことを忘れてたんじゃないよ。感動してたんだよ。孝介くんすごい。超がんばってる。昔のあのかわいかった孝介くんがこんなに大きくなっちゃったよ。
まあとにかく、俺はベッドに寝っ転がる泉の体に、いそいそと手を伸ばす。あ、変なイミじゃなくてね。マッサージだからね。肩とか腰とか。ほんとに、やらしい目的なんか無いですってば。まじまじ。

「どう?きもちい?」
「んー・・・・・・」
「こことかイイんじゃないですかー?」
「んあっ・・・・・・、あー、もーちょい右・・・・」
「こっち?」
「ふぁ、・・・・・・その言い方やめねーとぶっ殺す」
「はーい」

何でマッサージってえろいの?これ世界的な謎だよね。いや別に、俺は悪くないよ、泉の声がえろいの。

「はい終了ー」
「・・・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・と、あれ?きもちくなかったかな。
ちょっと不機嫌そうな泉さん。

「・・・・・・なんか、はまだは、よすぎ」
「ほぇ?」

泉がなんかぼそぼそと呟いたけど、よく聞き取れない。聞き返しても無反応。なんだろう、何かしたっけ、俺。
しばらくして、泉がゆっくり口を開いた。

「・・・・・・映画とか、駄犬より忠犬のほうが感動的な話になるよな」
「なるほど浜ちゃんが大好きだと」
「俺は駄犬のほうがいいけど」

躾甲斐があって。

そう言って笑う泉の顔はいつもどおりだったけど、最後にちいさく付け加わった言葉は、ちゃんと浜ちゃんの耳まで届きましたよ。


"だから浜田が、好きなんだろうな"


これって、喜ぶべき、悲しむべき?




忠犬より駄犬の躾甲斐

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20110323 ちさと


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