ありがとう

なんて言えないよ


素直になれない性格だから。


っていうのが、ただの逃避行なんだって、つい最近、気付いた。



性格の所為にして、其れを自分で変えることから逃げていた。


変える努力をしてないのだから、変わる筈などないと云うのに。




僕は、弱かった。
いや、今でも弱いかもしれない。

でも、彼に出会い、彼女に出会い、僕は、今までの僕から、ほんの少しだけ変わったんだ。


一人は、枢木スザク。
そして、もう一人は、苗字名前。


皇子として、庇護されて育ってきた僕にとって、自由で奔放なこの二人には驚かされることばかりだった。

でも、この二人は僕のことを、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアではなく、ただのルルーシュとして見てくれた。


本国じゃありえないことだ。
恐れ多くも僕は、未来の皇帝候補なのだから。
ま、今となっては其れもかなわないか。
そもそも、あまり興味のない立場だった。
今は、憎んでさえいる。


スザクももちろんのことだが、何よりも僕の隣でずっと支えてくれていたのは、名前だと思う。

名前はスザクの幼馴染であり、スザクに次ぐ女ガキ大将だった。
・・・・・・・・・・喧嘩で負けたこともある。
これは、男だの女だの云々の問題ではないような気がする。向こうは、喧嘩のエキスパートなのだ。


と、とにかく。
僕は、名前に感謝している。
その気持ちを伝えたいのだが、何分言葉に詰まってしまう。

いったいどうしたら、


「ルルーーーーーーーーーーーー!!」


どん、だった。
きゅう、なんて生易しいものではない。
ぎゅむ、だった。
それどころか、少し、メキリと言った。

後ろから、スザクに並ぶ底抜けの体力の持ち主に、思いっきり抱きつかれた。

正直、痛い。

「ねね、ルル!さっき向こうでお花見つけたんだけどさ、」
「名前・・・・・・・・重いんだが、」
「女の子に向かって重いは禁句でしょ!まあいいや、行こ、ルル!!」

僕の意思などまるでそこにはないかのように(というか実際、ない)、ずるずると引きずられてしまう。
ちくしょう、人の話を聞け。

「そうだ、ルル。」
「ん?」

ずい、と差し出された手のひら。
その小さなもみじの上に乗る、小さな、花飾りのついた髪留め。

妹の、ナナリーのものだった。

「これ、ナナちゃんのだよね。」
「あ、ああ・・・・・・・・・・・・・。そうだな。」
「渡しといてもらえる?スザクん家の廊下に落ちてたんだ。」
「ああ・・・・。悪いな。」

――――――もしやこれは、ありがとうと言うチャンスか・・・・・。

がんばれ。がんばれ、ルルーシュ。

言え、言ってしまえ、恥ずかしいことじゃない、むしろ言うべきことだ、言わなければならないことだ。


心の中の自分が、自分を応援する。


「名前!!」



ああ、顔など絶対真っ赤だし、そんな、たった5文字を伝えるだけで、何でこんなに苦労しないといけないのか、と思うけれど。


「ありがとう!」



そう言うのは、思っていたよりは簡単で、気恥ずかしいけど、なんとなく胸の奥から広がる達成感と云うか満足感と云うか、とりあえずしてやったり感はあるし、目の前で大きな目をぱちくりさせている名前を見れるのはなぜだか嬉しかった。きっとスザクだったらこんな表情はされないのだろう、ああ、これが優越感か。


「どういたしまして!」


そして僕は、いいや、俺は、このときの名前の眩いばかりの笑顔を、一生忘れられないだろう――――・・・・・・・・・・・。





五文字に乗せる勇気



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日本に来た直後のルル、の、つもり・・・・・・。
うん、なんか、よくわかんないや・・・・・(´△`)

要するに・・・・・・・ちっちゃいルルはいろいろがんばってればいいよ、うん。
がんばれー


20100915 ちさと





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