ふわふわして、甘そうな茶色い髪の毛が好き。
ちょっとつり上がってる大きな目が好き。
優しく笑うその表情が好き。
少し高めの、でも落ち着いた声が好き。

問題は。

相手が、同じ野球部の、しかも男ってこと。


俺が栄口を好きな理由なんてわからない。
ただ、好き。大好き。
たとえこれが認められない関係だったとしても、いつまでも、好き。
イヤホンを半分こしたことがあった。
栄口が、どんなの聞くの、水谷って、なんて聞いてきて、じゃあ聞く?って、半分渡して。
そう、あれはゴールデンウィーク合宿のとき。まだ、友達だった。
ケーキを半分こしたこともあった。
じゃんけんで勝ち残って、栄口が、半分こしよって言って。2人でケーキをつついた。
あれは、三橋の誕生日。そのときもまだ、友達だった。

「水谷」

そう呼ぶ栄口の声が愛しくて愛しくてたまらなくなったのは、いつからだろう。
ふわりと笑うあの顔を、独り占めしたくなったのはいつからだろう。
あのまあるい瞳に、俺だけを映して欲しいなんてわがままを思ったのは、いつからだろう。
俺みたいな赤茶色じゃなくって、もっと明るい、はちみつみたいな色した髪の毛に、顔をうずめてみたいと思ったのは、いつからだろう。
ああ、なんで俺は男なんだろう。どうして、普通の恋じゃなかったんだろう。
好きなのに。大好きなのに。どうして、憚る必要があるんだろう。

「水谷ってば。聞いてる?」

ちょっと怒ったような、でもやっぱり優しくて甘い、栄口の声がする。
今、俺と栄口は、コイビトっていう関係。
俺が、募る思いを打ち明けたら、大きくうなずいてくれた・・・・・・って、そんなラブソングみたいなことはなかったけど。
正直、気持ち悪がられるって思ってたから、栄口の気持ちを知ったときは、本当に嬉しかった。栄口が、俺とおんなじ気持ちだったから。

「水谷ったら。・・・・・・もう、」


ぷんぷんとふくれっつらの栄口も可愛い。栄口の怒った顔なんて、野球部の中じゃあ俺くらいしか見たことないんじゃないかなぁ。いつも優しく笑ってるから。
堪えきれずに、俺は、そっと、その頬に口付けた。

「わっ・・・・・・!・・・・・・な、なにすんだよっ!!」
「これもひとえに栄口の所為であります!栄口が可愛すぎるのが悪いんだ!!」
「はぁ!?意味わかんないしッ!!・・・・・・てか、ずっと呼んでたのに無視すんなよ!!」

真っ赤な顔と、少し潤んだ瞳がこれまた芸術的なコラボレーション。ほんとに可愛い。世界一可愛い。ギネスに載ってもいい。俺が保障する。

「えへ。ちょっと、考えごとしてたから!」
「え、水谷でも考えごとなんてするんだ!?」
「栄口、俺のこと舐めてる?バカにしてる?何でそんなに驚いてるの」
「ご・・・・・・ごめん・・・・・・。いやでも、ほんとびっくりして・・・・・・」
「栄口の中の俺ってなんなの!?」
「うっ、うるさい!で!?水谷は珍しく何について考えてたの!!?」
「やっぱり珍しいって認識なんだ!?」
「ああああもう!!だってっ!水谷が考えごとだよ!!?世紀末じゃあるまいしっ!」
「そこまでゆう!?ひどいひどいひどい!!」
「そっ、それで!何について考えてたんだよっ!俺のことずっとほっといて!!」
「あ、だから拗ねてんの?大丈夫、栄口のことしか考えてなかったから!!俺はいつから栄口のこと好きになったのかなって!」

栄口がまた、はぁ?と言った。ええ、っと。俺の今の発言、なんか悪かった?俺のこと考える前に俺のこと見ろよー、とか言ってくれんのかな。それならいいな。栄口、ただいま俺の脳内の自分に対し嫉妬中?
そんな事を考えてる俺のことは無視して、栄口は続けた。

「別にいーじゃん、いつからでも。今、好きなんなら」
「・・・・・・!!おお!!いつの間に栄口、そんなにかっこよくなったの!!」
「これは、泉の受け売りだけどね」
「ああ!!泉なら言いそうだぁ〜」

くすくすと笑いあう。
泉はいつも、浜田に対して偉そうで。自身にあふれている。絶対に嫌われないって思ってる。
だけど、それは、泉が浜田のこと、絶対に嫌わないから。泉は、自分が愛されてることを疑わないけど、それは、同じくらい、もしかしたらそれ以上に、浜田のことを愛してるからで。もっとも、本人は認めないだろうけど。
浜田も、泉が浜田の事を嫌いにならない限り、下手したら嫌われても、泉の事を嫌えないってこないだ言ってたし。ほんとに、無自覚・・・・・・っていうか、泉が認めないだけなんだけど、あの2人はラブラブバカップルだ。

問題なのは、いつから好きになったかじゃない。だって、気付いたら恋に落ちてるのが、恋愛なんだから。
結局、今、これから、どれだけ好きでいれるかってのが、一番大事なことみたいです。

眉毛を垂れ下げて笑う栄口を見ながら、俺たちも泉たちみたいなカップルになりたいな、なんて思った。


君に恋する乙女な俺と


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song by : ikimono-gakari

20110113 ちさと



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