光と影とわたしと君と

わたしはいつの間に、こんなに雁字搦めに縛られてしまっていたのだろう。恋はこの世界で最大級の災害ではないだろうか。わたしにとっては少なくとも。だって恋をしてから、ずっと痛いんだよ。苦しいんだよ。つらいんだよ。

机に突っ伏して、早く時が過ぎることを祈る。昼休憩は、長すぎる。45分も何に使う。ご飯を食べて、移動の時間をとっても30分あれば十分じゃないか。

何の気なしに、机の下で足を振り回す。こつん、何かに触れた。カバンだった。小さなマナーモードの振動が伝わってきた。取り出す。開く。はじめはただの文字の羅列、脳が認識できていない。だんだん頭が働きだした。

差出人。さかえぐちゆうと。件名、今すぐ。本文、屋上に来れる?


まだ頭が動いていないようだ。こんな見間違い。そう思ってもう一度みた。内容は変わらない。勇人くんからのメール?まだ納得がいっていない。なぜだ。よくわからない。

おさななじみからの謎の呼び出し。別段行かない理由もない。ならば行こうか。昼のまどろみに溺れる体を無理矢理引きずって、教室の戸を開ける。なまえちゃん、どっかいくの?あ、うん、屋上にちょっと。そうなんだ、いってらっしゃい。うん、いってきます。そんなやり取りを間に挟んで。

屋上か。そういえば天気よかったな、お昼寝しちゃいそう。階段を上りながら思うのは、そんなことばかりだった。


ガタ、と軋むような音を立てて、屋上へ繋がる最後の扉を開く。薄暗かった廊下が色を反転させたように、目映い光が目に刺さる。


「栄口くん?」
「あ、なまえちゃん」


ふわりとした笑みを見せる幼馴染はいつだって、すべてを見透かしたような綺麗なまっすぐな目をしている。それが時としてありがたくもあり、そして今は、なぜだか、なぜだか。少し、怖かった。



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