崩れ落ちるということは

ゴールデンウィークが終わって、気付けばもう2週間。
感じていた壁は、思ったより薄くて低くて、簡単に壊れるものだった。何であんなに気にしていたのかが分からない。

出会ってたったの3週間で好きになって、1週間なにも話せなくなって、2週間経ったら元通り。
すごくあっさりしてる。嬉しくもあり悲しくもあり、この薄っぺらい関係がいつまで続くのかが不安になる。所詮、わたしたちはまだ一クラスメイトでしかないのだから。


「ねえ水谷ー、こないだの練習試合、勝ったんだって?やるじゃーん」
「えー?そんなぁ、俺何にもしてないよー」
「ほんとに何にもしてねえよな、エラーしなかっただけマシか」
「ちょ、阿部ひどーい」


水谷くんが、他の女子と話す。
野球部の人たちが、最近女子の間でとても人気だ。まあ、かっこいいからなんだろうけど。
わたしには何の権利もないのに苦しくて悔しくて、嫉妬、というのだろうか、なんともいえない不の感情が大行進してくるような。

自分が分からない。たぶん、水谷くんを好きなんだろうけど。
恋とは、こんな唐突に始まるものだったなんて、中学時代の自分はきっと信じなかっただろう。こんなに胸をきつく苦しめるものだったなんて、きっと信じなかっただろう。

ああ、こんなとき、いつもどうしていたんだっけ。一人では抱え切れないものを抱え込んだときの対処法とは。昔みたいに、仲のよい親友なんて、まだいない。篠岡さん?実はあまり仲良くない。その上野球部のマネージャーなんて。野球部員に対する恋心を打ち明けたところで、戸惑わせてしまうだけ。

どうしたらよいのかな。誰に聞いても答えはきっと返って来ない。壁は壊れてもその瓦礫を乗り越える術をわたしはもっていない。関係は元通りでも、それ以上にはならない。乗り越えたい。もっと近づきたい。瓦礫の撤去はいったい誰に頼めばいいんだろう。おそらくは、自分でしなければならない。もう少ししたら、頑張ってみようかな。



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