今日の天気予報はよく外れる



「お・・・・・おはよう」


ゴールデンウィークも明けたけど俺の心は晴れ時々曇りのまま。今日は朝練もなくて、いつもより少し遅い時間に家を出て、いつもより少し早い時間に教室の戸を開けた。

そしたらそのとき、少しうつむいていた俺の頭上から、いつもの可愛らしい、だけどずいぶんと聞いていない可愛らしい声がしたわけで。可愛らしいを二回言ったのは、それくらい彼女が可愛らしかったのだとそういうことにしておいて欲しい。
とにかくそんなだったから、俺の頭の容量は、あっという間にオーバーしちゃったわけで。

なにあれ可愛い。可愛い可愛い。今までのもやもやなんて一気に吹っ飛んじゃう可愛らしさ。さすが俺の天使。

と、そこまで考えて、はたと気付く。
俺、また、みょうじさんに気を使わせちゃった。

一気にしぼむ気持ち。自己嫌悪のスパイラル。
この休みの間ずっと考えていたことがある。俺は、かなり無責任だって。だって結局悪いのは俺なんだもん。

でもねでもでもね、文貴は学んだ。たった今。この瞬間に。後悔を吹き飛ばすためには行動が必要だと。


「おはよ、みょうじさん」


精一杯の勇気を振り絞ってくれた優しい君に、俺ができる精一杯のこと。笑顔は万能薬、と昨日の夜に栄口に何度も言われたことを思い出す。後で栄口にも御礼をしないと。購買のクリームパンでいいかな、と、財布に相談する。


ちらり、隣の席で読書に移ったみょうじさんを盗み見る。可愛い。ちょっと頬が赤いのは俺の所為かな。いつも本なんて読んでないし、照れ隠しかも。いや、俺が教室に入る時刻にはもう閉じているだけで、いつも読んでいるのかもしれない。

何にせよ、みょうじさんのことを考えて、胸が苦しくならない。それが嬉しいことだと気付いたのは、今日の俺の大きな進歩だと言えるでしょう。どうかどうかこの気持ちがみょうじさんに伝わりますように。恥ずかしいからまだいいかな。

ガラリ。誰かが開けた窓から5月の爽やかな風が入ってきた。まだ少し暑い。今日の天気は一日中快晴。気付けば俺の心の中も、雲ひとつない綺麗な青空が広がっていた。




back





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -