現実逃避とその結果

不名誉だ。

非常に不名誉だ。


水谷文貴は全力で、某タレ目のクラスメイト兼チームメイトに遺憾の意を示したい所存です。日本語おかしい?知らないよ俺日本語きらいだもん。英語はもっときらい。フランスイタリアスペインドイツ、うーん全部難しい。相対的に日本語好きかも。あれ、そういう話じゃないや。えっとなんだっけ。そう、阿部のこと。


ゴールデンウィーク合宿の締め、三星学園との練習試合。実質上、俺たちの初試合となった。
三橋がもちろんうちのエースで、俺たちも各々のポジションを守って。途中までは快調。パーフェクトゲームになりそうだった。その完璧に傷を付けてしまったのが、つまり、そのなんていうの、俺、なんですけど。あはは。・・・・・・はい、そうです笑っている場合じゃありません。俺が悪いです。

でも、だからって!と、文貴くんは思うのです。
クソレフトって。阿部が、俺のこと、クソレフトって。そんなこと言わなくたっていいのに!って。


「みずたに、」


合宿所の隅っこでうずくまって頭をかきむしっている俺に、頭上から優しい声。いつもの俺の友達。


「・・・・・さかえぐちぃ」
「いつまでもそんな顔すんなって。結果的に勝ったんだからさ」
「・・・・・・・・・・でも」
「阿部は口は悪いけど、正しくないことは言わないよ」
「・・・・・・うん」


それが。分かるから、つい自分を責めちゃうの。
俺は。たぶんまだまだ全然だめ。いっぱい練習しないと。


「なまえちゃんのこともさ」


びくん。
まだその名を聞くと過剰反応。


「ちゃんと、謝んないと」


ずしん、と。俺よりもみょうじさんとの付き合いの長い栄口の言うことだから、余計に。
わかってるわかってる。俺はずっとこの合宿を言い訳に逃げ続けてきたことなんか。もうすぐ学校が始まっちゃう。ちゃんと話さないといけないのに。指がすくむから。でもこのままじゃだめだから。
やんなっちゃう。こんなにこんがらがるようなことじゃ無かった。ほんとはね。結局俺が悪いの。そういうこと。

あーあ、と小さく吐いたため息は、空気に溶けて消えていってしまった。ギクシャクしてしまった今の関係も、こんな風に消えていったらいいのに。



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