野球で、一番打者、と言えば。

こちら側の攻撃の一番手。誰よりも多く打順の回る打者。
打ち、走り、あわよくば盗塁し、誰よりも先にホームに帰ってくる。
他の打者は、自分を犠牲にしても、一番打者を帰すことに集中する。

対戦相手が始めての相手の場合、向こうがこちらを知らないぶん、こちらも向こうを知らない。
だからこそ、敵の守備を警戒しつつ、真っ先に飛び込んでいく、いわば特攻隊長のようであろう。


そんな、西浦高校野球部の特攻隊長、泉考介は、今日も、走る。








購買のメロンパンへと。


+++



4時間目終了のチャイムと同時に、彼はスタートする。
号令も半ば、友人の田島悠一郎にかけられるスタートの合図とともに。

「ごおっ!!!――泉、頼んだ!!4つ!!」
「いずみ、君、ガンバ、って!!!」

「おう、任せろ!!!!」


教師の怒鳴り声など聞こえない。
もっとも、毎日の恒例行事に、教師側も怒る気力を失っているのだが。


風のように、廊下を走り抜ける泉。
一年九組の教室は、購買から遠くはなれたところにあるので、ハンデが大きいのだった。
彼が漸く購買に辿り着いた頃には、もう既に、そこには人だかりができていた。
その隙間に細身の体を割り込ませ、ワゴンへと手を伸ばす。
器用に指先で探りながら、お目当ての品を見つけ出し、掴み取る。
4つ―――いや、今日は5つにしておこうか、と、数を数え、大事に懐へ抱え込む。
そのままレジへ移動し、代金を支払い、今日も、泉の仕事は終わったのだった。


+++


「お帰り泉ー!!今日もサンキュー!!」
「あ、あ、あり、ありがとぉ!」
「お帰りお疲れー。」

「おうよ。もっと褒めろ。」


どさり、今日の戦利品を机の上へおろす。
わああ、とそれに群がる友人を見て、今日も泉は満足げに微笑んだ。
田島が、三橋が、浜田が、おいしそうに頬張るメロンパンのうちの一袋に、自分もそろりと手を伸ばした。
千切ったひとかけらを口の中へ放り投げると、ふわりと広がる甘味。
限定100個のメロンパンの内の5つが、今自分達の手の中に――それは、泉にささやかな優越感を与える。
そして、それを奪取してきたのは自分だ、ということも、その気持ちを強くさせる。

「―――あれ、一袋多くね?」

気付くのおせぇよ、田島。と、口には出さず呟いて、泉はそれを一瞥する。

なんとなく、一袋多めに買ってしまったメロンパン。いつもなら、自分たちの分―――4つしか買わないところを、もうひとつ、と手を伸ばしてしまった。
それは、優越感のためではない。泉はよくわかっていた。
くるりとこちらを振り向く泉。目があった。
大きくて綺麗な黒の瞳が、私の目を捉えた。呑まれる、と思うほどに。
でも、睫毛はそこまで長くないな、いや、長いか。でも思ったよりは長くない。
私は泉の睫毛にどんな期待をしているんだ。


「・・・・・・・・プレゼント。」

泉は小さく、しかししっかりと、確かにそう呟いて、私の机の上に、その袋を置いた。

「いつも、こっち見てるだろ。欲しいならやる。」

泉は、すべてお見通しだったらしい。私が毎日、泉と、その周りの様子を見ながら、頭の中でモノローグをつけていることを。
あれだけいつも見つめていたら当然か。そうかそうなのか。まあ確かに、購買でどんな風に死闘を繰り広げてるのかなんてのを見るために、わざわざついてったこともあったし。ストーカーじゃねぇかとか思った奴、あとでツラ貸せコルァ。
うんまあ、決して、メロンパンが欲しかったわけではないが。決して、メロンパンが、欲しかったわけではないが。くれると言うなら、貰おうじゃないか。
なぜなら、泉少年が他人に物をあげるなど、滅多にないことなのだから。

その次の日から、彼のノルマは5つのメロンパンになった。
そして、私のささやかなナレーターごっこも、終わりを告げることになったのである。


特攻隊長、出番ですよ
***title by 蒼灰十字***
(今日はカレーパンもよろしく!!)
(てめ、苗字、調子乗んな。)


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あれー意味わかんない、っていつものことですね^^;
ジャンルわかんなくてほのぼのって言う設定ですけど、まあ、9組の日常、ってことで。
そして名前変換のない罠/(^O^)\
慌ててタイトルの下のカッコのアレのとこに苗字だけどーん(^◇^)
なんとなくメロンパン係って泉な気がするー。いつもメロンパン食べてるからかな?メロンパン王子wwwwww
足は田島君のほうが速いんだろうけど・・・。
そうか泉にパシられる浜ちゃn(´艸゜)
浜ちゃんかわいいよ浜ちゃん浜ちゃん浜ちゃn((((((

三橋はそういう役にはならないんだろうなあ。


20100812 ちさと




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