「こんなとこにいたんだ」
じゃり、と地面と靴底の擦れる音が聞こえたと思ったら、ふわふわの茶色い頭が見えた。
私の彼氏、水谷文貴。手には菓子箱。無駄なにやけ面。
「探しちゃったよ、あと昼休み5分しかない」
「それはどうも。貴重な休憩時間を私のためにわざわざ割いてくださって」
「素直じゃないなあ、名前ちゃん」
「正直だって言ってくれる?」
「はいはい、お姫様」
スッ、と菓子箱の中から彼が取り出した棒状のお菓子。それのチョコレート側を、私の咥内に突っ込んだ。
「今日が何月何日か知ってる?」
「・・・・・・ふうひひはふふうひひひち」
「あはは、なに言ってんのか全然わかんない」
プレッツェルの外側をコーティングしているチョコレートが熱で溶け出す。・・・・・・この味は季節限定のやつだ。
「11月11日。・・・・・・何の日かは、言わなくても分かるよね?」
そして彼は、私の反対側を咥えた。
少しずつ彼の顔が近づいてくるのを感じて、私はゆっくりと目を閉じた。
喰らいつけ幸福論***title by 21グラムの世界***
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20110814 ちさと
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