「苗字・・・・・・・」
珍しく暗い顔をした田島がそこにいた。
「負け、た」
いつもの彼らしくない、か細い声だった。
握り締めたこぶしが震えていた。
「頑張ったね」
私も、それしか言えなかった。
「田島は、よく頑張った」
田島はうつむいたまま続けた。
「悔しい。・・・・・・悔しい。・・・・・・・・悔し、い」
ユニフォームは泥で汚れていた。彼は泣いてはいなかった。
「悔しい、悔しいんだ」
ただ、それだけを繰り返していた。
私は何もできず、ただ、彼を見つめるだけだった。
ある夏の昼下がり
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20110814 ちさと
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