多分、悠一郎は機械に弱いと思う。だからこそ、こんなことするんだけど。
携帯のキーをつつく。変換は、英数のまま。
「1992*4#111、」
次に続くのは、『388811159』かな。ぽちぽち。送信。ぴろーん。
多分悠一郎は気付かない。わからない。はず。わからなくていてほしい。
きっと悠一郎は何も気付かなくて、翌日からもいつもと同じような日常が続くのだろう。そうであって欲しい。彼は、そのままでいい。
これはゲーム。私の気持ちを、そして彼の気持ちを確かめるための。彼はどうするだろうか。私の事が好きなら、引き止めるはず。きっと。悠一郎は、そういう人だから。
そう、これはゲーム。結果がどうなるかはわからない。すべては、悠一郎の手に委ねられている。
幾許か刻が過ぎた。
小さな音を立てながら振動する機械。受信。悠一郎から。
受信ボックスを開く指が震える。開く。開いた。
――名前、
いつもと同じ文面なのに、どうしてこうも無機質に感じるのだろう。
――答え、わかった。
どくん。
わかったんだ。
ああそっか、悠一郎は、パズルは得意なんだったっけ・・・・・・
――029999888111
ワ、
カ、
レ、
ヨ、
ウ、
――・・・・・・別れよう
ほろり。
涙がこぼれた。
止め処なく流れるそれは私の頬を伝い、床へと落ちて行った。
まるで私を嘲るように(後悔なんてしていない)
(でも、このゲームは、私の、負けだ)
(・・・・・・後悔、なんて、)
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20110526 ちさと
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