+大学パロ





「隣、いい?」


さりげなくかけられた声に心が跳ねた。
私の憧れの人、泉孝介君だったから。

「どうぞ」


そういう私の声は、震えてなかっただろうか。


泉君は、私の高校のときの同級生。
とは言っても、9クラスもある学校だ。同じクラスになったことは一度もない。
ただ、唯一の接点は、たった一度、同じ委員会に所属したことがあった。ただ、それだけ。
泉君は、西浦高校野球部の一番打者なんてものをやっていて、野球の腕はそれなりにある。
と言うか、泉君の親友(?)の田島君と言う子が、とんでもなく野球上手だったのもあってのこの控えめな表現だが、実際泉君は、ものすごく野球が上手だと、私は思っている。
泉君は、かわいらしい大きな瞳に反しての、潔い男らしい性格が評判を呼び、高校時代からたいそう女子に人気があった。私なんて足元にも及ばない、きれいな子達からも、好かれていた。
だけど泉君は、「野球に集中したいから」と、その子たちをことごとく振ってきた。
私は、告白する勇気なんてなかったけど・・・・・・。


私の気持ちは、今もあのころと変わらない。


泉君と同じ大学へ進学したのは、言うなれば偶々だ。
私の目指す薬学部が、この大学はちょっと有名。
野球部が、ちょっと強い。


偶々、偶然。


今、憧れの泉君が、隣にいるのも、全部、偶然。



だと、私は、この瞬間まで、思っていた。






「俺さ。」

不意に泉君が話を切り出す。

「苗字さんのこと、高校ン時から、好きだったんだ。よかったら、俺と、付き合ってください。」

「え?」

「隣にいたくて、同じ大学目指した。いつも、目で追いかけてた。高校の時も、野球よりも、苗字さんに夢中だったっときもあった。」

淡々と語る泉君。徐々に熱くなっていく私の頬。

「俺は、苗字さんのこと、ずっとずっと好きでした。」


目の前の泉君の頬も、赤い。耳まで真っ赤だ。




私が返事をするまで、後10秒――――・・・・・・・。





わずかなタイムラグ 
(それは、私の頭が正常に機能するための時間?)
(それとも、幸せの余韻に、浸るための時間?)


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20100912 ちさと





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