長い、長い闇の中…
ぼくはずっと彷徨っていた。

ぼくが『トモダチ』に斬られて、何年経ったのだろうか…
あの時、確かに斬られて生が絶たれたと思ったのに…
ぼくは、辛うじて生きている感覚があった。

だけど真っ暗。

どこを見ても一色の闇…
それから景色は変わらず、時だけが流れていった。


でもある日、景色が大きく変わったんだ。
見渡すと、そこはいつか『ぼく』と『トモダチ』が過ごした場所。

そこでやっぱり見つけた。
生まれてからやっとこの場所に慣れてきた頃の『ぼく』を。

『ぼく』はあの冷たく寒い場所で、孔(あな)を覗き込んでまわっている。
そして一つの孔をよくよく見つめて、孔に向かって話しかけていた。

あぁ…あれがキミとの出逢いだったね…

それからしばらくぼく達の過去を眺めていたら、ふと不思議に思ったんだ。

今見ているコレは、『ぼく』の記憶じゃない…

『ぼく』の夢じゃないんだ。


…だとしたらコレは誰のもの?


そんなこと問わなくてもわかってるくせに。


コレは『ぼく』の『トモダチ』…

『YU』の記憶だよ……


そう気づいた時には、あの時の記憶がだんだん終わりに近づいているのがわかった。

『ぼく』が生んだ悲劇の日…


あの日確かに、『ぼく』は『YU』に斬られて終わったんだ。

はじめはユウを本気で恨んだ。
でもこの記憶を見て、ユウがぼくを斬った理由がわかったんだ。


そう思った瞬間、景色がまた大きく変わった。
何か力も湧いてくる。
地面に足が着いた。

─…ぼくが、長い、長い夢から醒めた瞬間だった…


「そこにいるの?ユウ?」

いるかどうかもわからない瓦礫の山に向かって、ぼくは呟いていた。

しばらくぼぉっとしていたら、ヒトの気配が近づいてきた。
ゆっくり目線を向けてみるとそこには…


見間違うほど大人になった『ユウ』が立っていた。


攻撃が当たったのか、ユウの体の半分がぼく達特有の能力で再生されていた。
それにかまわず、ユウは無言で『ぼく』を見ている。

ユウ…キミは今、何を考えてるの?
ぼくの姿を見て、どう思っているの?
驚いてる?
怒ってる?
悲しんでる?

ぼくを斬ったことに傷付いてる?


ユウの表情からは何も感じない。
ただ『ぼく』を見据えているだけ。

出来るなら…ぼくはこのままユウに笑いかけて抱きつきたかった。

でも出来ないよ…

ぼくの身体にはAKUMAがいるんだから。
ユウはエクソシストでしょう?

闘わなくちゃいけないから…
それよりも『ぼく』はここにいたらイケナイんだよ。
ぼくはユウに遭わない方が良かったんだ…

だからぼくは、ワザとキミへの恨みだと嘘をついてまでして、AKUMAに覚醒した。


そうでもしないとユウは 、『ぼく』の正体を知った時に酷く失望するから。

ぼくは一生、自分の正体を隠す為にAKUMAになることを選んだ。


ユウが傷付くのは嫌だ。
でも、『ぼく』の正体を知って傷付く方がもっと嫌なんだ。

ごめん、ユウ。
ぼくも本当は闘いたくない。
でもお願い…
もう一度『ぼく』を破壊して。

キミが生きる理由をここで裏切りたくない。

キミが自分で『私』を見つけてくれるように…


どうか『ぼく』を斬って自分を責めないで。
『私』はいつでも待ってるから。


だからキミはキミの信じる道を進んで。

『ぼく』に囚われて止まってはいけない。


『私』はここにいるよ。

キミは進んで、


いつでも待ってるから…
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