『待ってるね…』

『ずっと…待ってる…』

あの人が、また俺に語りかける。

最近では、夢の中にまで出てくるようになった…

まるで現実味の無い世界に俺は居て、その先にはあの人がこちらを向き、いつものように語りかける。

俺の足下には、相も変わらず蓮が美しく咲き誇っていて…


だが、それだけではなかった。
その夢の中で俺は、手に妙なものを持っていた。

一輪の《青い薔薇》─…

今まで見てきた薔薇は、派手な赤や白といった色だけだった…

なのに夢の俺が持っているのは、まるで青空を映したような蒼。


夢の中だから何でも有りなのか、と少し嘲笑った。

確かこの花は『《不可能》の代名詞』だと、美しいものに詳しい自分の師から一度聞いたことがある。

だったらなんだ?
何故、夢の中で俺はこの花を持って佇んでいる?
このまま歩いて行けば、あの人の元へ行けるというのに…


─あの人を見つけることは《不可能》だと云いたいのか…?

もしそれが本当なら、俺は何の為に今まで生きてきたんだ…
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