「ねぇ名前ちゃん、結局誰が好きなの?」


私の手を握り不安げに見つめてくるのは紛れもなく私の恋人の蒼井弘樹
…なんだけど実は彼は一人ではないのだ。

どんなタイミングで入れ替わるのかわからないけど彼には複数の人格があり、それぞれに私は好意を寄せられている。
まあ若干一名物凄い敵意を向けてくる奴もいるのだが。


「私は弘樹が好きだよ」

「僕も弘樹だよ、でも弘樹は僕だけじゃないんだよ?」

「うん、そうだね。でも私の好きなのは弘樹だけだよ」


我ながらずるい答えだと思うけど、多くの時間を彼と過ごした私は彼の中の誰か一人を選ぶことなんてできなかった。
みんながみんな、私の大切で大好きな弘樹だから。

それでいいと言ってくれる弘樹がいる、不安で何度も聴いてくる弘樹もいる。
私を好きでいてくれる弘樹がいる、私を嫌う弘樹もいる。

みんながみんな、蒼井弘樹を作り上げる大切なものなのだ。


「僕はそういうあやふやなお前が嫌いだよ」

「でも私は弘樹が大好きだよ」

「ずっとずっと一緒にいてね、俺のこと見捨てないでね」

「もちろんだよ」

「名前が好きだと言ってくれるなら、ぼくはそれだけでいいんだよ」

「うん」

「名前ちゃん、好き」

「私も好きだよ」


この家には一人しかいないけど、私は寂しさを感じたことなんてないんだよ。
だからみんな、ずっと一緒にいようね。


パターン16.多重人格男子


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