いっつも教室の隅っこにいる蒼井弘樹くん。
長ったらしい前髪を垂らしてずっと下を向いているからなんとなく近寄りがたい雰囲気があるので友達と話している姿はあまり見かけない。
そんな彼がなんとなく気になって私はしばらくずっと蒼井くんを観察してみたのだが、なかなか彼は面白いということに最近気づいてしまった。
例えば今、いつもの通り椅子に座っているだけかと思いきやその机の上には習字道具が乗っているではないか! 何をするのか見ていると墨を削り、水で薄めて半紙に筆を滑らし始めた。
そして出来上がったものは、雪舟もびっくりな特徴的な水墨画だった。
あれは…なんだろう。 上手いっちゃあ上手いんだろうけど描いてある動物?がなんなのかわからない。 まるでピカソと雪舟を足して二で割ったような特徴のある絵だ。 私は評価する。五千円で買おう。 教室ですることじゃないとは思うけどね。明らかに浮いてるよ蒼井くん。 …あ、でもみんなちょっと感心してるわ。
「名字さん」
「………え?あっ、私!?」
「うん」
観察するのに夢中で蒼井くんに話しかけられているのに気がつかなかった。 ていうか、蒼井くんに話しかけられるなんて初めてじゃない!?
なんて軽く感動している私をよそに蒼井くんは相変わらずの無表情のまま、少し躊躇いがちに口を開いた。
「いつも…ずっとみられるの、恥ずかしい…」
「!ごごごめんね!」
「うん、じゃあ」
小さな声でそう言ったかと思うと彼は自分の席に戻っていった。 耳まで真っ赤になっているのをみると彼にしては相当勇気を出したんじゃないかなぁ、と思いました。
今度は私から話しかけよっと!
パターン11.根暗男子
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