「なー名前ちゃん、虹の根本には宝物が埋まってるんだって」
「へぇ」
「名前ちゃん宝物欲しい?」
「うん」
「そっかぁ…名前ちゃん、俺のこと待っててくれる?」
「よくわかんないけど、待っててあげるよ」
「じゃあ俺は絶対名前ちゃんのところに帰ってくるよ」
そういうと弘樹はにっこりと無邪気な笑顔を見せた。
私は、それ以来もう5年も彼の姿を見ていない。
学生だった私も今では社会に出て働くようになっていたが、弘樹のことを忘れたことは一度もない。 自惚れとかじゃなく弘樹は私のことが大好きで、私との約束を一度たりとも破ったことはなく、きっと守ってくれるって信じている。
弘樹は、絶対に帰ってくる。
そんなことを考えながら帰路につくと、ふらりと足が勝手に動き出す。 ああ、こっちは昔通っていた学校の方向だ。 懐かしみながら歩いていると前にぼんやりと人影を確認した。 目を凝らして見てみるとそれは、私がずっと待っていた人だった。
「弘樹…?」
あの頃と変わりのない姿で、あの頃のまま時間の止まった弘樹がそこには立っていた。 その服装は母校の学生服のままで髪も背丈も変わらなくて、とても私と同い年の男の子には見えなかったけど、何故だか凄く、心が穏やかになっていくのを感じた。
「ただいま、名前ちゃん」
「おかえり、弘樹」
「…待っててくれた?」
「…ッずっとずっと、待ってたよ!」
「ごめんね。宝物、見つからなかった」
「馬鹿だなあ、いいよそんなの」
「うん。虹の根本に行ってきたよ」
「そっか」
「今度は、俺が待ってるね」
「待ってて、必ず会いに行くから」
「うん、じゃあ」
さよなら
パターン09.お馬鹿男子
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