05


「ところでなんで理科室にいるの?」

「別に理科室である理由はないんですけどね。理科室の責任者とちょっとした縁があって」

「沼田先生と…?」

「まあそんなこと、どうでもいいじゃないですか」

「う、うん、そうね」


なんかあんまり触れてほしくないのかな…?


「そんなことより何か用があったんじゃないですか」

「ああっ、先生忘れてた!!じゃあね戸崎君!」

「…慌ただしい人ですね」


戸崎君に言われてようやく何のために理科室に来たのか思い出し、後ろ髪をひかれる思いで戸崎君に別れを告げて理科室を後にした。

ちなみになんで戸崎兄が私の生徒手帳を届けてくれたのかというとただ単に戸崎弟が面倒臭がっただけらしい。ちょっとショック。





「せんせープリント持ってきてやったよー」

「何で上から目線なんだ…?まあありがとな、みょうじ」

「ところでさー先生」

「ん?俺は国語は苦手だぞ?」

「誰も先生に勉強について頼らないから安心していいよ」

「それはそれで寂しい」


「先生、戸崎君って知ってる?」


私がこの名前を出した瞬間、先生は若干顔を青くした。
目は物凄くキョロキョロ動くし貧乏揺すりが酷い。

え、なに?先生の地雷踏んじゃった感じ?
ていうか先生になにしたの戸崎君…。

なんだか先生が哀れに思えてきて珈琲を進めて落ち着くように言ったらようやく少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「先生大丈夫?」

「おおおおう!大丈夫だ問題ないぞさあそろそろ下校時間だみょうじはそろそろ帰るといいあまり暗くなると親御さんも心配するしなははは!」

「うわっ先生が壊れた」


嘘。

全然落ち着いてなかった。

先生は冷や汗だらだらの上早口でまくしたてた挙句、私の背中をぐいぐい押して職員室から追い出した。
なにか隠していることは明白なのだが、まあそれは後々伊勢さんに聞いてみるとしようと思い大人しく帰路に就いた。

蝉の鳴き声を聞いた。

いよいよ夏が始まろうとしている。



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