24 夜の学校はなんだかとっても不気味に感じてしまう。 昼間はあんなに人がいて煩いくらい賑わっているのに、夜になると物音ひとつ聞こえなくて、廊下を照らすのは消火栓のぼんやりとした赤い光と月明かりくらいだ。 普段あまり見ない光景なので異世界に来てしまったかのような気分になる。 …そんなことはありえないんだけど、いや、あってたまるか! まあなにが言いたいのかといいますと 想 像 以 上 に 怖 い 。 これがもし私一人だったらこの時点で引き返して七不思議の解明自体記憶からデリートすることだろう。 でも、今の私には可愛い後輩が二人もついているために逃げ出すことが不可能な状態にあるのだ。 しかもびびっていることがばれてしまえばそのネタは一週間引っ張られてしまうであろう…ここは先輩らしく頼もしいところを見せなければ!と私が張り切った矢先に聞こえる足音。 「と、ととととざきくん」 「どっちのことですか」 「どっちもだよ!なに!?何の足音!?」 「なまえ先輩落ち着いてくださいよぉ。ほら、こっち」 そう湊くんに腕を引っ張られ近くの男子トイレに押し込まれる。 …男子トイレ…いや、まあいいんだけどさ…女の子としてなんか、いやなんでもないです。 男の後輩二人と男子トイレで息を殺すって中々ない経験だと思う。ていうか多分もう一生ないと思う。 「なまえ先輩手汗酷い」 「思っても言わないのが優しさだよ湊くん」 「2人とも静かに」 「はい、すんません」 ひたひたと足音が近づいてくるのが聞こえて緊張してしまい思わず湊くんの手を強く掴んでしまっていたようで逆に強く手を握り返された。 仲良く手を繋いでいるように見えるけれど私の手の骨がミシミシ言っているのが聞こえるので手を繋いでいることに照れている余裕はない。 やばい!まじで!まじでこれミシミシいってる!湊くん意外に力強いよ!! 呻き声が出ていたようで奏くんに足をぐりぐりと踏まれたけどそれ逆効果だから!余計呻き声出るから! 上と下からのダブル攻撃に本来の目的を果たせないまま、私は既に瀕死の重体である。 まさか物理攻撃でここまで疲労困憊するとは思わなかった。 「誰かきますよ」 耳元で聞こえた奏くんの声に意識を手と足からトイレの外へ戻し抵抗を止める。 流石に二人も攻撃を止めてくれて三人で足音の人物に視線をやった。 「誰か、いるのか?…気のせいだよな、俺が神経質になっているだけだよな」 足音の主は沼田先生だった。 沼田先生はいつもの授業中に見る人物とは全くの別人に見える。 懐中電灯を片手に持ち恐る恐る歩く姿は何かに怯えているようで、凄く挙動不審だ。 でも、私はあんな先生の姿を過去にも見たことがある。 ちらりと双子に視線をやると彼らはなにやら納得したような顔をしていた。 先生が去った後、奏くんが「今日はもう帰りましょう」と言うから、私は心にもやもやを抱えたまま帰宅した。 ちなみにばっちりと帰りも送らされました。…だから、普通逆じゃない? でもこの双子に何を言っても無駄だというのは短い付き合いでもとっくに学習済みなのでここは大人しく双子を送り届けました。 |