09


「伊勢さん五分で天才になる方法知らない?」

「そこの窓から飛び降りてみたら?」

「…あっ人生やり直せと!?」

「冗談だよ」


嘘か本気かわからないから怖いよ伊勢さん、泣いちゃうよ。


「ていうかみょうじさん今日機嫌よさそうだよね」

「わかる!!?」

「(凄くわかりやすい。単純なのか)」

「みょうじちゃん今日からイケメンの後輩君とお勉強会なんだって」

「ああ、なるほどね」

「えへへー!いいでしょ!」

「はんっ精々その頭の悪さが露見しないようにね!」


伊勢さんの一言がぐさりと突き刺さる。
…もうばれてるなんて言ったらまた馬鹿にされるのは目に見えているので黙っておこう。

今日も図書室で待ち合わせだったんだ!
美園ちゃんには悪いけど先に帰っておいて貰おう。
あ、美園ちゃんも一緒に勉強するかな?


「ごめんねみょうじちゃん、今日はハープのお稽古なの」

「美園ちゃんレベル高いよぉ!!」


キーンコーンカーンコーン


「あ、チャイム鳴ってる」

「先生来るよ、そろそろ戻ろうか」


がやがやと各自席につき次の準備に取り掛かる。

次はー…英語かぁ。

一瞬、私の中に住む睡魔という名の悪魔がさぼっちまえよ!と囁いたが湊君の顔を思い出すと悪魔はまるで聖水を掛けられたかのような呻き声を上げながら消えていった。
ここまで全て私の頭の中での出来事だから!

先輩としての威厳を出すためにも勉強しますかー、と先生が入ってくるのを眺めながら机の上に教科書を出した。
この時点で眩暈がしそうになるも気をしっかりと持ち、ペンを握り先生の話に耳を傾けた。

しかし空いた窓から流れ込んだ風が生暖かくてなんだか落ち着かなくなり、集中力はわずか十五分で途絶えた。

私にしては頑張った結果だと思いたい。

やがてうとうとし始めると机の中の携帯が光り、確認してみると伊勢さんからだった。


From:伊勢さん
sub:(件名なし)

本文:
お前の決意はそんなものか


…ありがとう伊勢さん、私頑張る。



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