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absent "G" -11- カミサマ。 アナタの言う『見返り』ってまさか・・・・・・?! 『ナッツさん!』・・・不意に声をかけられた。振り向くと、良く知った顔が其処に在った。作業員の中で最年少の男の子。成人したばかりだろうか、あどけなさが残る目鼻立ちの、可愛らしい子だ。彼は、辛い作業と分かっていて敢えて作業に参加した、あの街の住民だった。 彼はボクに決まって声をかけて来る。ボクと目が合ったと同時、キラキラした瞳で駆け寄って来るその姿と、『いつもありがとうございます』とか『この間頂いた果物、とても美味しかったです!』とか、他愛も無い話をこれ以上無いくらい嬉しそうに語るその姿・・・・・・ ・・・何処かで見たような気がするのはボクだけだろうか? と、今度はボクの背後から声がした。『ココぉ〜!』と。 ギョッとして振り向いたら、其処にはリンちゃんがいた。『携帯!ちっとも取りに来ないから持って来たし〜!』・・・話の途中だったけど、ボクは彼に断りを入れる余裕なんて無かった。手を振るリンちゃんに慌てて駆け寄った。今この場ではボクは『ココ』じゃないんだよ。頼むからリンちゃん、その名でボクを呼ばないでくれ。 慌ててリンちゃんの至近距離まで近寄り、リンちゃんを隠すような形でヒソヒソと事情を説明したボク。『ココ』ってバレると面倒なんだ、と頼み込むと、リンちゃんはすぐに了承してくれた。そして、『でもナッツって!ベタすぎてありえないし!チョー可笑しいし!!』って笑われた。 女の子特有のハイテンションに、参ったなぁ、なんて苦笑しつつ額に手をやったその時・・・背後から心臓を止めかねない視線。ボクの首筋を掠めて貫く先は・・・リンちゃんだ。 ボクは、恐る恐る振り向いた。振り向いて・・・近寄って来る彼の名前を呼んだ。 『お友達ですか?』っていつもの笑顔で話しかけてきた彼を前に、ボクはリンちゃんを自身の背に隠していた。そのボクの仕草に向けられた瞳の中に、今にも零れ落ちそうな殺意を感じたボク。ボクは咄嗟に答えた。『妹だよ。妹みたいな・・・子だよ』と。そして間髪入れずに『ボクの親友の妹で、ボクのもう一人の親友の彼女候補だよ』と。 『やっ・・・やだし〜!彼女候補とか言われるとマジ照れるし〜!』・・・リンちゃんが興奮してボクの背中をバシバシと叩いた。痛い。興奮しすぎじゃないリンちゃん?いやそれよりも何よりも。 ・・・今の視線、覚えがあるのはボクだけだろうか?! そんなボクの疑問はさておき、気が付くと彼はリンちゃんと固い握手を交わしていた。『ボク、ナッツさんには凄くお世話になってるんですよ』なんて和気あいあいと自己紹介を始めた彼に、ボクは言葉を失っていた。 ・・・さっきの負のオーラは何だったんだろう?夢か?夢だよね。だって彼がそんな危険人物な訳無いよね。だって今の彼、殺意の『さ』の字も感じない。うん、夢だ。夢に決まってる。・・・そう思わせる程の変わりぶりだった。いや・・・そう思いたいボクがいた。 彼のとどめの言葉、『末永く宜しくお願いします!』を聞いたから。 ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・あれっ? この期に及んで聞くのも何ですが意を決して聞きます。 ・・・カミサマ?これってひょっとして・・・・・・?! 不意に、その彼と目が合った。 ・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!! 『拝啓カミサマ、ボクは今、』 -I'm Stinging you,God!?- Thank You for Reading till the Last!! ◇◇◇◇◇
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