「赤ちん大丈夫?」 「微妙…だな」 「今からそっち向かうね」 「ああ、すまない」 珍しく赤ちんが風邪をひいたらしい。身体はそんなに弱い訳じゃないって本人が言ってたし滅多に風邪なんてひかないから、ちょっとびっくりした。あと声が少しがらがらでなんか変な感じもする。 title[半回転を2回分] 「なんか食べ物買ってくる?」 「お前が食べたいものを買ってくるといいよ」 「ん〜…わかった」 スーパーへ行くと半額シールだの割引だのと色々ごちゃごちゃしていた。勿論紫原はお菓子コーナーへ行きスナック菓子を手にした。 「新作のプリン味…」 ちなみにこのスナック菓子はポテトチップスである。新作とか限定の言葉に弱いせいか味に疑問符がついてもかごに投入してしまう。そのあたりにあるものを適当に入れると次は飲み物のところへ向かった。 「こ、これは…」 炭酸飲料を見つめる、そのラベルには沖縄のゴーヤ味と称されたこれまたおかしなものだった。 「赤ちん飲むかな…」 もし赤司が飲めなければ青峰か緑間あたりに飲ませればいいと思いとりあえずかごにいれる。しかし今日は変なものがよく見つかるものだ。紫原は次のコーナーに足を踏み出した。 「お邪魔しまーす」 「よかった、意外と早かったな…」 「ほらほら〜病人は寝てなきゃ」 「ああ、」 赤司はいつもより火照った顔でふらふらと歩いていった。紫原は歩いていこうとする赤司を軽々と持ち上げて階段を上っていく。確か部屋は階段を上って右手だったような、と自分の記憶を辿ると同じく道をすすむ。そして部屋のベッドに着くとそっと下ろしてやった。羽毛布団だからか身体がまるで沈んでいくみたいだった。 「赤ちん、いっぱいお菓子買ってきたんだけど」 「好きなの、食べていいよ」 「食べないの?」 「あまり食べる気分じゃないかも」 「ん〜…何なら食べる?」 「お粥みたいなやつがいい…かな」 「オレ、お粥作れる自信ないかも…」 紫原はしょんぼり落胆した表情でお菓子を探っていた。赤司は朝から何も食べていないのだろうか、何か自分にできることは無いのだろうかと考える。部屋にはがさがさと袋の音だけが響いた。 「…あ」 「どうした?」 「そうだ、」 「?」 「ちょっと待ってね赤ちん」 そういうと漁っていた袋から一つ選んで、適当に口へ含んだ。ある程度口内温度で溶かしていくと顔を近づけた。何をするかわからないが赤司は嫌な予感がしていた。 「んっ…」 舌から舌へ伝わる甘みとトロリとした食感。熱で頭がぼんやりしていてもなにかがわかるものだった。ちょっとした食欲からつい口を開けたが正直恥ずかしいと赤司は内心で呟く。甘さが後味となり顔を話すと軽く糸がひいた、紫原はそれを拭うとヘラッと笑った。 「チョコレート…」 「そうだよ〜美味しかった?」 「とても恥ずかしかった」 「えー、なんで??黄瀬ちんがそういうときはちゅーすればいいって言ってたんだけど…」 「黄瀬め…」 「?」 大体紫原が言う変な知識は青峰か黄瀬から得たものである。部活に復帰したらグラウンド走らせたあげく散々こき使ってやろうと思った。そして同時にこいつには躊躇や恥が無いのかとも思った。 「あまり良いものではなかったけど、敦の気持ちで吹っ切れたよ」 「ほんと?またやる?」 「遠慮しておく、舌噛まれたらいやだし」 「噛まないよ〜まぁ赤ちんが元気になってくれたなら良かったぁ」 「…ありがとう、まともに心配してくれたのはお前くらいだ」 「いえいえ〜俺が寝込んだら、ちゅーよろしくね」 「お粥のみで十分!」 「えー!」 * 「あれー?今日紫原っちは休みっすか?」 「ああ、風邪らしい」 「へ〜珍しいっすね!赤司っちと入れ替わったのかな」 「そうかもな、…お前のせいで」 「…?」 「気づけバカっ」 赤司は黄瀬の肩を掴みキスをするような体制に入る。一瞬の出来事であったし黄瀬もまさかキスされるとは思わなかったので呆気をとられてしまった。そして赤司は手に力を入れて唇ギリギリのところに口づけをした。 「!?」 「これのお陰で敦が風邪引いたんだぞ」 「え、だから俺なんか悪いことしたっすか?てか何でキス!?」 「まだわからないのか、敦に変な知識植え付けた罰だよ」 思い返せば赤司が休んだとき紫原にどうしたらいいか聞かれたような…そこでキスがどうのと答えた記憶がある。黄瀬本人まさか紫原が真に受けるとは思いもしなかったのでこれは痛い失態である。しかしまさか赤司から直々に罰…黄瀬にとっては少々嬉しい罰が下るとは、なんとも言えない気持ちになった。 「これでお前も風邪を引けば良いよ、黄瀬」 「赤司っちがキスしてくれるなら喜んで…」 「まず敦に謝れっ、グラウンド30周してこい!!」 「うう〜」 「そしたら敦の家に行って看病だぞ」 「は〜い」 にしてもこの風邪はくるくるとキセキを回っている。全部の原因が風邪ならまさかキスで感染したのだろうか、と考えただけで恐ろしくなる。まぁ多分それは無いだろうと安直な考えは切り捨てた。 「にしても恥ずかしい…」 いつも通り部活を仕切りながらも赤司は紫原としたキスの味が舌に残っているような気がして、思い出す度赤司は1人顔を赤くした。様子から見る限り意外と純情(ピュア)なキャプテンであった。 「俺とのキスは恥ずかしくないっすか?」 「躾の一貫だからね」 end(エンドレス羞恥心) ← |