布団の傍で鳴る携帯のバイブ音で目を冷ました。一向にやまない振動に苛々しながらダルい身体を起こし、携帯を手にする。開けば今吉と表示されている画面。ふざけんなよ、と呟いた。 title[お隣さんは自由人] 「もしもし…」 「あっ!花宮ぁ、やっと起きてくれたんかぁ〜」 「…なんだよアンタか」 「すまんすまん」 「要件は?」 「え?あー、なんとなく花宮の声聞きたくてなぁ…、はなみ」 なんとなく声を聞きたくて電話か、苛立ちが頂点に達した花宮は通話中の携帯を思いっきり閉じて適当に放り投げた。床には鈍い音が響く。時間を見ると今はなんと朝の4時でこれは本当に朝なのだろうかと空を見たら、まだ星が光っていたのだ。迷惑にも程がある。もう一度寝ようと布団へ潜ると今度は部屋のインターホンが鳴った、もうこれは嫌な予感しかしない。しつこく鳴るものだから渋々ドアを開けてみるとある人物がそこに立っていたではないか。怒りの頂点を越えて寧ろ呆れてしまった花宮は仕方なく目の前のやつの話し相手をしてやったのだ。 「まじ勘弁してください」 「寝ぐせついてる花宮もかわえぇな〜」 「この変態、ドア閉めますよ」 「あー…ここ寒いんやけど〜…」 (こいつ…) 「部屋隣じゃないっすか、さっさと失せ…戻ってください」 「せっかくええもん持ってきたんに!」 「?」 「花宮が大好きで大好きでたまらんものといえば〜…」 花宮はちょっと期待してしまった、ちょっとどころが本気で期待してしまった。花宮の中で良いものといえばそれくらいしか思いあたらないのだ。朝の低血圧のせいで頭の回転も鈍い、早く布団に入って眠りたかった。 「チョコレート…」 「…」 「とでも言うと思ったやろ?」 「!」 「それは部屋に入ってからのお楽しみや」 「はなから期待なんてしてないしっていうか自分の部屋にいい加減戻ったらどうなんです…」 「えー喜ぶと思ったんやけどなぁ…」 「…」 「なぁ花宮ぁ?先輩に寒い思いさせてええ度胸しとるやん」 「…」 「部屋入れてくれないとこの前の夜のこと…」 「…あー!!もう!!!!入りたきゃ入れよクソメガネ!!」 「さすが花宮、話が通じるなぁ」 このあと今吉が持ってきた"ええもの"というのがチョコレートだったのか、はたまた今吉の趣味による何かだったのかは秘密である。しかしこれにより花宮の機嫌が一層悪くなったのだけは確かだった。 「あ、花宮」 「なんすか…」 「あけましておめでとう」 「…あけましておめでとう?」 「ほら、」 「?」 今吉が指した方を見ると日の出が見える。腕をひかれてベランダに出ると綺麗な黄金色と朝焼けのコントラストが輝いていた。ああそういえば今日は一月一日か、と花宮は呟いた。行事にはあまり興味がなくクリスマスなんかは今吉に連れられて巨大ツリーを見に行った程度だった。考えてみればここ一年、今吉と知り合ってから行事は毎々今吉と一緒である。 「3月で花宮ともお別れかぁ、さみしいなぁ」 「今にでも別れたいのが本音なんですけど」 「まぁそう言わずに、な」 「…どうせバスケやってれば、嫌でもまた会えますし」 「なに?寂しいって?」 「んなこと言ってねぇよ!!ばぁか!!」 end (年明けネタ収納) ← |