今日は花宮が学校を早退した、風邪をひいたらしい。朝から少し顔色が悪いのはわかってたけど、珍しい気がする。多分先日の大雨が原因だとは思うけど、それで風邪をひくほど花宮は身体が弱かったのだろうか。だから気になって様子を伺うべく放課後、オレは花宮の家に行くことにした。まだ花宮宅へお邪魔したことはあっても、部屋へは行ったことがなかった。





title[不器用な風邪]




普段俺が行きたいと言っても入れさせてくれないしひどく拒絶する。遊ぶときでもいつも家へ入ってもリビングだし。
どんな部屋なのだろうか、ちょっとした期待を抱きながら家に足を運んだ。きっと部屋で休んでるだろうことを考えて。
インターホンを押すやぱたぱた足音が聞こえ、誰かがドアを思いっきり開けた。
危うくぶつかりそうだったがギリギリのところで避けられたのが良かった。
ふと前を見るとそれは額に熱冷まさシートを貼り、布団ごとずるずると引っ張ってきた花宮がいる。マスクはしておらず口からは幾度も吐息が漏れた。
こちらが唖然としてると花宮が喋りだす。


「…はあ、お前か古橋、用がねぇなら帰れよ」


見る限り、いや見てわかる様で実に辛そうである。言葉には出さないが可哀想だなと思う。
オレは「お邪魔する」と言い、許可をもらうもなにもすぐに靴を脱いだ。
そして花宮をリビングらしきとこにあるソファーへと引っ張る。
触れた手は熱く本人はいつも以上に弱々しかった。
相当ひどいのか目も半ば虚ろで、家へ訪問したことが少し申し訳ない気もするが、まあこの機会を花宮への看病の一環とすればきっと構わないだろう。


「花宮、食事は摂ったか、あんまり体調が悪そうだったから」

「…うるせぇな、お前なんかが来なくたって、これくらいは、自分で…」

続きを言い切れず途端にむせた。やっぱりお前、まともに対処してないだろう。
仕方ないのでオレはソファーから起き上がった花宮を強制的に倒す。

「いいから、お前は大人しくしていればいい」

「…くそっ」


渋々承諾し布団をまた改めて身体へくるむ。
台所を見るとどうやらお粥のような何かが鍋に入っている。
さすがに健康体のオレでも食べたら体調を崩しそうな物体である。それをビニールに入れ鍋を洗う。


「花宮、お前お粥も作れないのか。意外だな。」

「ちげーよ!こんな体調で、まともに作れるかよ」

「つまり、そのためのオレだ。」

「なにドヤかましてんだよ」

「ほらほら安静にしないとな」


まだ炊飯器にご飯があって良かった。
それを全て洗った鍋にいれて卵だのお粥にいれるものも目分量で投入。
煮ている間暇なので花宮へちょっかいをだしにいった。
いつの間にか寝ている花宮の顔の前にしゃがみ熱冷まシートをはがす。薬の匂いを微かに感じた。
寝顔を見るとなぜかムラムラのような何かが心へ沸き上がる。
そして出来心で口へキスを落としてみた。


「…何してんだよ」


寝ていたはずの花宮が頬を赤く染めてこっちを睨んでいた。本人は口元を拭い気持ちわりぃと呟く。


「いや、ただキスしたいと思ったからしただけだ」

「はあ?ふざけんな、…んぅ!?」


これ以上喋られてもうるさいので口を塞ぐ。
舌を挿入してみると時々声を漏らした。絡める最中水音のようなぴちゃだのくちゅだの音も聞こえた。


「ぅ、…ふぁ、んっ、んぁ」


やらしい。実にやらしい。苦しそうに背中を掴むもんだから少し興奮してきた。口を離すと唾液の透明な糸がひく。
ああ、風邪移ったかな…、そう思い口を軽く拭う。
当たり前のように花宮はこちらを睨んだ。


「古橋てめぇ…ふざけんなよ…」

「おっと、お粥が焦げるな」

「は、ちょ、なに逃げてんだよ!」


ぐつぐつ煮えたものを掬い味見をしてみた、…なかなかいけるな。
我ながらまともに料理は作れるようだ。
実は作るのが初めてだなんて言えないしな。
べつの器に幾らか移し軽く冷ます。飲み物を、と思い冷蔵庫を見ると見事に炭酸水と牛乳だらけでさすがにまいった。花宮らしいな…。
どうせ棚を見たら紅茶とコーヒーくらいしか入ってないだろうと思ったので予め持ってきた麦茶を取りだしコップへ注ぐ。


「ほら花宮、できたぞ」

「食えるもん作ったよな」

「当たり前だ、自分で食えるか?」

「それくらいできる」


そう言いお粥を口に含む花宮。
手が震えててこっちが心配だ、ひやひやする。
一瞬顔をしかめたが、飲み込めたから平気か。


「まぁ、まずくはねぇな」

「なら良かった、…なぁ花宮」

「なんだよ」

「手、震えてるぞ」

「それがどうした」

「オレが食べさせてやろうか?」

「は?」

「口で」

「え?」

「冗談だ」


ふっと笑って見せる。
すると花宮が予想外の返答をしてきた。


「…ったく焦らすような冗談言うんじゃねーよ」

「なんだ?食べさせてほしかったのか?」

「…!んなわけねーだろバァカ!」

「じゃあ明日オレが休んだら、駄々こねて花宮に食べさせてもらうかな」

「見舞いなんざ行くかよ!!」

「来てくれよな?」

「…はぁ、わかったから食わせてくれよ」

「すまんすまん」



というわけで、オレは明日風邪をひく予定を作ることにした。
だから今日は花宮をたくさんいじってやろう、風邪を忘れるほどにな。次はオレが風邪をひく番だ。
…頭痛はあまり好きではないがな。


end(不器用さは相手に響く)










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