※♀花宮×♂古橋っぽいので注意



「ねぇ、古橋くん」


階段で呼び止められる。確かこの女はバスケ部マネージャーの…花宮真だったかな、記憶がよみがえる。第一印象はお嬢様気質の優しめな少女と言った所でとある会社の社長令嬢。噂だと頭が相当良いらしい。なんでも瀬戸より頭が良いんだとか、最初聞いたときは驚かされた。瀬戸繋がりで何度か会話もしたことがある、普通に良い子過ぎるのが妙に不自然なイメージだった。



title[囁きの危険信号から]



表向きではそんな感じで特に悪い印象は受けなかったが、別の噂ではこんなことを聞いた覚えがある。

「悪童」

意外だなとも思えなかった自分がいた、薄々知っていたのかもしれない。悪童と呼ばれるのは酷いラフプレーからであるが、花宮本人統率力も抜群だしある意味ではバスケのセンスもあった。中学時代では3年時に監督を務めていたらしく花宮の整った容姿と綺麗な体型、そして信頼性の高いゲームメイクから男子生徒達はラフプレーの指示を受け入れた、何よりも勝てる確率があがるから。しかしみんながみんな合致したわけでなく嫌になり花宮へ反論した生徒もいるが次の日には普通にバスケをしているような現象も起きている。

「…古橋くん、聞こえてます?」

「あぁすまない」

「ふふ、突然ごめんなさいね」

「別に大丈夫だ」

「よかった」

正直今の喋り方に違和感しか感じなかった。裏がある、まるで本性のような裏が。オレは花宮に本当に悪童と呼ばれていたのかを聞くことにした。微笑んでいる笑みが怪しくてたまらない。

「先に良いか?ちょっと聞きたいことがあるんだが…」

「どうぞ」

「花宮は…その、中学時代に悪童と呼ばれてたのか?」

顔が変わった、意表を突かれたかのよう。いやまさしくその通りといっても過言ではないリアクションを見せた。

「えぇ…」

「またここでもラフプレーを…」

途端に花宮は一変する。女に対して恐怖を抱くことは滅多にないが正直、花宮は本能的に怖いような気がしていた。


「気付かれちまったのは仕方ねぇな」

途端に普段とは全く違う口調になる、これが本当のお前なのか花宮真。丈の長いスカートが風に揺れた、結ったポニーテールと共にふわりと。清楚に見えるのはあくまで表面だけだったようだ。

すると顔を近づけさせて、耳元で囁く。直接届かない身長差は階段により変わらぬものとなっていた。

「中学のときは、そうだなぁ10人は潰した。随分聞き分けの良いチームメイトだから命令しやすかったよ。今回はまだメンツを見てないからわからないが場合によっちゃぁ中学の時より上手くいく」

「オレは結構お前のこと気に入ってんだぜ」

最後の一言をどう受けとれば良いのかはわからなかった。しかし、なぜか花宮には従わなければいけないと本能が訴えてる。古橋の高鳴る緊迫感をよそに花宮は言葉を続けた。

「従わなかった奴はどうしてやったかな、とりあえず男が喜ぶこととでも言っておくか。あと他の男に始末させたりとかな、オレから直接殴ったりはしないけど。当初から瀬戸はすんなり言うこと聞いてくれたよ、持つべきものは親友ってよ」


「それで健太郎から紹介されたとき、勘づいたんだ」



「お前は最高の駒になるってな」




きっと今、花宮は笑みを浮かべているだろう。この話を冗談として受け止めてしまえば別に何を気にすることなんてない。しかしどこが冗談か、まずそこからだ。最高の駒、か。一体瀬戸はこんなやつのどこが良かったのだろうか、花宮と関係を持っているということは中学の時にラフプレーをしていたことになるのだろう。

花宮は階段を数段上るとまた喋り始めた。普通の女子高生なら太股が見えるなんて当たり前かのようなスカートもきっちり膝下まで伸ばし、服装に非がない花宮はただの少女だ。強い日差しと共に風が強く吹く、スカートを抑えながらこう言った。口調を元に戻して。

「来年にはもう私のものよ」

「あなたには充分に協力していただきたいわ。よろしくね」

「康次郎くん」

花宮がうふふ、と笑い階段を掛けていった。本当にああいった純粋無垢な少女であればオレだって惚れるかもしれない。男達はそうやって花宮の手駒に落ちていったのだろう。オレも、その一人なのかもしれない。

end(高嶺の花と甘美な毒)









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