「ねぇねぇ、青峰っち。」

「んだよ」

「怒ってるっすか…?」

「だとしたらどうすんだよ」

「…」

「いい加減はっきりしろ」


title[それは虚言じゃないの]


黒子っちに好きと言ったら僕も黄瀬くんのこと好きですよと言われた。素っ気なく好きですと言ってくれる黒子っちは優しい。オレは色んな人に愛嬌を振り撒いてしまう、それが気がつけば癖となっていた。優しくしてもらえば好きとか時には愛してるだなんて言葉を投げてしまっては誤解されることもある、オレの"好き"はお礼みたいなものなんです。黒子っちとかは別で、あんな可愛い顔して男らしい本人のことを指して"好き"と言うのだ。でもそれは決して恋愛対象とかではなく親愛の印。本当に恋する意味で好きなのは、青峰っちなんだ。

「あの、黒子っちは普通に好きなんスよ…?」

「嘘いうなよ」

「違うっす、嘘なんかじゃ…!」

「テツのことが本当は好きなんだろ」

「ちがっ…」

「あの行動のどこを否定すりゃいいんだよ」

「…っ」

ついさっきの出来事だ。黒子っちに呼ばれて二人でお昼を食べていたとき、黒子っちが思わぬことを言い出した。

「僕、本当に黄瀬くんが好きになってしまったようです」

「…へ?」

そのとき、唇を奪われた。意外とこんなことしちゃう子だったんすね、不意に行われたキスは黒子っちが飲んでたバニラシェイクの味がした。甘い香りがする。塞がれていた口が放された。緊張するのと何かを期待してしまう気持ちを息と共に整える。

「黄瀬くん」

「なっ、なんすか…」

「黄瀬くんは誰が好きなんですか」

「…黒子っちも、好きっすよ?」

「"も"では嫌です」

「…うん」

普段の自分の行動に反省をする、ごめんね黒子っち。オレは黒子っちが大好きで大好きでたまらないんだけど本命は違うの、君の相棒が、好きなんだ。無言でいるとオレたちではない誰かの足音が聞こえた。姿をすぐ消してしまったけどオレは誰かわかってしまった気がした。今のは青峰っちだと。
「黒子っちごめんっ、本当はね、青峰っちが、」

「一番好きなんですよね?」

「え?」

「わかってます、早く追いかけてあげてください」

「うん…!」

駆け足で背中を追う、絶対青峰っちだ。急いで階段を降りて上履きのまま外へ出た。でも中々追い付けず、辺りを探しても探しても見当たらなくなってしまって、どうしようかと緊迫感が訪れる。すると後ろから声がした。振り返ると見慣れた人物がいる。


「おい、黄瀬」

「…青峰っち…!?」

そして今に至るのだった。青峰っちが本当に好きだけど、オレの行動のせいで嫌われちゃったのだろうか、だとしたらすごい後悔がオレを圧していく。治らない癖はカバーするしかない。それすら出来なければオレは一生このままなんだ。この不安な感情が抑えられなくなったせいか目頭が熱くなってくる。涙があふれて止まらなくなった、視界がぐちゃぐちゃになってる。泣いても意味がないこと位はわかっているのに。目を擦って見た青峰っちの顔は少し驚いているように見えたのは気のせいだろうか。ああもう嫌だなオレってば。

「おい、黄瀬」

「うっ、ひぐっ、」

「涼太」

「…ぇ?」

モデルなんかの顔じゃない、ただの泣き虫の顔で青峰っちを見た。名前で…呼ばれた?もうなにがなんだかわからなくなってしまいまた泣く泣く。袖もびしょびしょかもしれない。わんわん泣くオレの姿は子供も同然だ。

「…ったく世話のやける奴だな」

「ごめんなさい…っス…」

「顔上げろ」

「うう…」

涙で崩れた顔にキスが落とされたような気がした。誰のキスだろう。ぐちゃぐちゃの視界に映れるのはそこにいる人物しか考えられなかった。青峰っちの意外な行動に困惑する。キスされたと思えば涙を舐められた、そんなの舐めてしまったらしょっぱいっすよ。

「青峰っちぃ…」

「あ?」

「オレは一番、青峰っちが好きなんすよ…?」

「あー、はいはい」

「嘘なんて言いたくないっす…」

「知ってるよ、それくらいは」

「…!?」

「ちょっとからかおうとお前の反応見てたらこんなんになるとはな、オレも心外だわ」

「オレのこと騙し…た?」

「騙すだなんて人聞きの悪いことはしねぇよ」

「…ううう」

なんだよなんだよなんだよ、あんたはオレで遊んでたんすか!?確かにオレもあのとき黒子っちとムード作っちゃったりで色々申し訳ないと思ってるけどひどいっす。…でも、そんな青峰っちもひっくるめて全部好きなんだよだとか、そんなこと言うのは恥ずかしいっす。

「青峰っちのばかぁ」

「まぁ…悪いとは思ってる」

「オレも、ごめん、なさい」

「嫉妬はした」

「う…」

「泣くんじゃねぇよ」

「うん…大好き」

「はいはい、オレもお前が好きだ。とにかく涙をどうにかしろ、それから相手してやる」

「うん…」

黒子っちに見透かされて青峰っちには騙され(本人は騙してないというが気分的に)、もう自分の行動は意識しようと思う。そのあと何が起きたかって言わなくてもわかるだろうし恥ずかしくて言えやしないっすよ。本当にもう、青峰っちてば加減を知らないんだから。


end(好き好き、君への気持ち)


黄瀬くんは甘えん坊ちゃんというかなんていうか…良い子。
親愛なる友人への誕生日に書きました。
青黄ちゃんは好きなんですが中々書こうってならなくて…
HappyBirthday*:・.。









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -