今日は久しぶりに自分用のお菓子を買ってみた。普段は敦に買ってあげるだけで自分用に率先して買うようなことはしない。だけど敦の気まぐれや好き嫌いで残ったものをもらったりはする。買ったのは駄菓子屋で売っている普通の練り飴で味は気紛れに葡萄。敦も一緒にいたから、本人はてっきり自分にくれるんじゃないかって目を輝かせていた。

「室ちん、今日はそれくれんの?」

ほらきた。

「いいや、これはオレ用なんだ。」




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買った理由には少し反応を楽しみたかったのもあった。落胆するのかだだをこねるかとか…とはいうものの敦の事だからなんとなく検討はついている。

「へー、室ちん珍しー!ね、オレにもわけてよ〜」

そう言う本人の両手にはすでに大量のお菓子が所持されている。お菓子たちは無造作に袋に詰められて息苦しそうだ。

「ん〜気が向いたら、ね」

「えーっ、ケチ〜」

「あははっ、たまにはいいだろ?」


駄菓子屋から出た道からは足を速めていく。寮に戻ってゆっくり味わってみよう。興味と楽しみで身体が軽い。敦は少し拗ねた表情をしつつもお菓子を頬張りながらオレについてくる。

「室ちん速いよ〜」

「そうか?だってほら、帰宅時刻に間に合うかわからないし」

「う〜」


すたすた歩いて行き、ようやく寮へ帰れた。敦との相部屋の鍵を開けて、そこにあるベッドに二人してダイブする。ベッドスプリングが悲鳴をあげるが気になんかしない。ふかふかした布団の乗るベッドは気持ちがよかった。少し身体を捻り起こし、買ってきた練り飴を取り出す。天井の明かりにあてながらただ綺麗だなと思い見つめる。紫色に輝く飴の光彩に早くも敦はとりつかれていた。隣の芝は青いと言ったところだろうか、自分の持ってるお菓子はほったらかしにしてこちらばかりを見つめる。

「ねぇ室ちん」

「なんだい」

「それ、」

「ん」

「食べたい」

「…だめだよ」

「なんで」

「さっきも言ったじゃないか」

「むう…」


眉間に皺を寄せて口を尖らせている。あまりいじめすぎちゃうと可哀想かな、とも思うけど蓋を開け早速練ってみる。そういえば敦はこんな感じに練るお菓子が好物だったことを思い出す。だからあんなに執着してたのだろうか、なら自分で買って食べてるはずだが…。地道に練っていくと軽く柔らかくなって、よく延びる。それを舌で受け止め口に運んだ。口内が一気に甘く染められて暫く粘りけが残る。ちょっと美味しかったからともう一口、またもう一口と食べていくと敦が我慢できなかったようでまた尋ねてきた。

「ねぇ〜、ちょーだい?」

「そんなに?」

「うん、だって室ちんの食べてるのみると欲しくなっちゃって…」

「また買ってくればいいだろ?」

「室ちんのじゃなきゃ嫌」

「…」


少し顔を赤らめて甘えてくる敦は、素直に可愛かった。てっきりお菓子にばかり執着してるのかと思えば"オレの"だからか。なんかもう、負けたよ。仕方ないなぁと呟き、口に飴を含めそっと口づけをした。それを求めていた敦はすんなり受け止めて、もっと欲しいと言わんばかりに舌を動かす。微量の唾液が顎を伝い落ちていく。

「…ふっ、んぅ、」

やっとのことで敦の口から逃れた。舌を絡ませたせいなのか飴の特性のせいなのか、口元が嫌にべたべたする。

「室ちんは相変わらずちゅーが上手だよね」

「ふふ、そうかな、敦の食らいつきが凄かったから」

「え〜?そうかなぁ」


へらっと本人は満足そうな笑みをこぼす。ふと時計を見ると帰宅した時間よりも一時間も過ぎていて、もうじき夕食の時間だった。残りの練り飴はまた後で食べようと近くの冷蔵庫に閉まった。敦の散らかしたお菓子を片付け、呼びかける。

「アツシ、行くぞ」

「うん〜」


そっと鍵を閉め、食堂へ向かっていく。今日の夕食は一体なんだろうか、二人で会話をしながら廊下を進んでいった。



end(甘さを二等分、毎度あり)










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