愛、とは

「スレイすき!」
「オレもなまえがすきだよ!」

子供の好きはなんて単純なんだろう。好きの意味を分かっているのだろうか。まあそれを教えたところで彼らがわかるとは到底思えないのだが。

「スレイはわたしのどこがすき?」
「え? うーんっと?」
「言えないの?」
「かわいいとこ!」

そう言って恥ずかし気もなく太陽みたく笑ったのだ。彼は今でもそう思ってくれるだろうか。そう言ってくれるだろうか。

「すきどうしはケッコンするんだって」
「およめさんになるんでしょ? わたしスレイのおよめさんになる!」
「ほんと!? やったあ!」
「ねえほかにはだれがすき?」
「えっとね、ジイジとミクリオと、」
「わたしも! ジイジとミクリオすき!」
「えっ!? じゃあみんなのおよめさんにならないとだね!?」

結婚もお嫁さんも、意味を知らないただの憧れ。スレイは女の子は大変なんだな、って変に感心してたな。いやいや重婚なんて法律が許さないし。

「じゃあみんなにすきって言ってくる!」
「じゃあオレも! オレは毎日みんなにすきって言うよ!」
「え!? じゃあわたしも!!」

「何見てるんだ?」

右肩から突然声が掛かり、顔を上げる。そこには手元の写真の少年が、そのまま大きくなったようなスレイが立っていた。

「アルバム。懐かしいでしょ」
「へえ、まだあったんだなー」

いつの間にやら家に上がり込んでいたらしい。セットのミクリオは今日は委員会だって言っていたっけ。
ソファに座って密着してはアルバムを覗く。スレイもあの日の出来事を覚えてはいたらしく、クスリと笑みを溢すと私の方に頭を乗せた。

「なまえ、好きだよ」
「私も、好きよスレイ」