まだ

高校デビューも考えた。肩まで伸びた髪をもっと伸ばして巻いたりしようとも考えた。メイクも覚えようと考えた。だけどどれも面倒だった。
私には女の子らしいがわからない。無理。諦めていたときに隣の席の日向から告白された。
まだ七月ですよ。出会って三ヶ月ですよ。それを伝えるとみょうじと居て楽しかったんだと。惹かれちまったんだと。断る理由もないから付き合ってみた。
確かに日向はいい奴だ。前からわかっていたけど、なんか傍に居てよくそう思う。
第一男扱いしない。いつだって優しくて紳士的で。私もそんな日向を好きになった。だから、彼の為に諦めたことももう少し頑張ろうと思った。

「え? 女の子らしい服っスか?」

まずは、相談。

「うん」
「なまえちゃん、江ノ島盾子ちゃんってわかる?」
「え、誰それ?」
「おねえ時代遅れ過ぎぃー! 今一番売れてるカリスマ読モデの江ノ島盾子だよー」
「しかもこの学校の一年生ですわ。最高にナウい女子高生なんです!」
「どくも? ナウい……?」

ああ、そういえば。一年にすっごく派手な子が入ってきたかもしれない。
染めた髪はふわふわに巻いてごりごりのメイクにパンツ見えそうなスカート履いた一年がいた。確かに可愛かったしよく覚えている。彼女がモデルの……ふーん、よく知らないけど。

「彼女が来た服は必ず盾子売れするんですよお! わ、私も江ノ島さんの服好きなんですう……」
「はあ? アンタみたいなゲロブタがー? やめなよー、汚い豚足目立つじゃーん」
「ふゆうう! だだだ、だって、ワンピースとか可愛いんですう!!」
「盾子ちゃんは何でも着こなしちゃうからねえ」
「あ、唯吹雑誌持ってるかも!」

学生鞄の中身を広げる唯吹ちゃん。コスメだとか音楽プレイヤーだとかなんかごちゃごちゃと出てきたことにまず驚いた。私の鞄の中財布と携帯しかないけど。教科書とか全部置きっぱなしだし。

「え、ケバ」
「ナウいです!」
「可愛いっスよ!?」

何故皆が彼女をこれほどまでに支援するのかわからない。今はまだ、ね。