「杏…?何で…」
「ご存知でしょう?彼女のこと。同じ風紀委員ですものねぇ」
クフフと特有の笑い声で目を細めて雲雀を見る。
そしてーー…
「それでは聞きます。
君は杏の…
何を知ってるんですか?」
そう言うと黒曜生の男は笑っていたことなど信じられないくらい赤目の方でギロリと雲雀を睨みつける。
かなりの殺気が含まれているようだ。
雲雀は一瞬ビクッとなったが男を睨み返して言った。
「何をって…君は杏の何?
君なんかに言う訳ないだろ」
「クフフ、そうですか…。
どうやら君に聞くまでもなかったようですね。
君は杏のことを何も知らない」
「、は……」
その言葉が雲雀をピクッと反応させた。
だが雲雀にも限界がある。 先ほどだいぶ攻撃されたせいでもう喋ることも困難になってしまったのだ。
それでも雲雀は体を手で支えながら男を睨む。
しかし男は口元を怪しく緩めながら言った。
「それでは今度こそ続けましょうか」
「……!」
男はその言葉が合図のように再び雲雀を攻撃し始めた。
ドガッ、ゴッ
鈍い音が響き続ける。
そして今度こそ雲雀は意識を手放してしまったのだがーー…
攻撃をし終えた男が床に倒れている雲雀を見下して呟いた。
「何も知らない奴が…杏の側にいるべきではない」
そう言った表情は無に近かったが、二色の瞳の奥の方は何か物語っているようだった。
それは深い悲しみと怒りがこもっているように見えた。
「…杏姉…」
そしてそのまた奥の扉の裏でフゥ太が眉を垂れ下げながら杏の名前を呼んだことは誰も知らない。
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