恋、なんて | ナノ

嫌だ、どうして雲雀くんなの。


そう思った時にはもう遅く、お父さんはお見合い成立の電話をし終えていた。




「じゃあお見合いは一週間後だ。よろしくな、茉耶」

「え、ちょ、お父さん…!」



そんなに私がお見合いを承諾したのが嬉しかったのかお父さんは。
すごく笑顔でスキップしながら部屋を出て行った。




「………」



嫌だ、本気で嫌だ。


…お父さんは雲雀くんと私のこと知らないからそんな呑気でいられるんだ。

雲雀くんと私が同級生だったこと知ってるの?

…あの様子だと絶対知らないな。
とりあえず連絡がついたお見合い先を承諾した、そんな感じだろうか。


…はぁ、私はどうすればいいの。









そうは思っても一週間なんてあっという間。
ついにこの日がやってきてしまった。



「(…嫌だ)」



真面目にバックレたい。
お見合い断りたい。


だけど私の意思ではないとはいえ一度受けてしまったお見合いにバックレるのはどうかと思うしお父さんに申し訳ない。

だから私はその場所に着いたらすぐに言ってやる。
お見合いなんて断るって。

どうせ断るならちゃんと言った方がいいだろう、…嫌だけど。


ごめんね、お父さん。

やっぱり私にはお見合いは無理。
相手が雲雀くんならなおさら。


そう思いながら指定された場所に向かっていた。





そして向かうこと数十分。
ようやく着いた場所は"雲雀"という表札がある家だった。



「う、わ」



すごく和風で日本家屋な家。

そう、このお見合いが行われる場所は雲雀くんの家だったのだ。


昔聞いたことがある。

雲雀くんの家はすごい日本家屋だって。
…ほんとだったんだ。




「………」



ああ、これからここに入るのか。

私は意を決して門をくぐり、玄関の戸を叩くとすぐにその戸が開かれた。



「あ…」

「お、お久しぶりです、茉耶さん」



開かれた戸の先にいたのは高校時代で風紀副委員長だった草壁くんだった。
私は高校の時に風紀委員だったためかなりお世話になった人だ。

それからは一度も会っていなかったためとても久しぶりだ。


そしてその時雲雀くんは風紀委員長だった。

つまり未だに草壁くんが雲雀くんの側にいるってことか、ここに草壁くんがいるってことは。




「…久しぶり、草壁くん」

「、今日は一人で来たんですか?」

「…うん、お見合いを…断るつもりで来たから」

「…そうですか」



そう言うと草壁くんは黙り込む。

そりゃそうだよね。
だって…私と雲雀くんだもの。


お見合いなんて成立するわけがない。




「だけどとりあえず恭さんに会ってください。こちらですので」

「………」



そう言って草壁くんは私を前へと案内する。

"恭さん"だって。
呼び方が変わったんだね、草壁くん。
前は「委員長」だったのに。


てか断るって言ってもやっぱり本人に会わなきゃいけないんだよね、うん。

はぁ…会いたくないな。


そう思いながら私は無言で草壁くんに着いていくと、やがて草壁くんの足は止まった。






「恭さん、…茉耶さんが来ましたよ」

「…入って」




ドクン


襖越しに聞こえる低い声。
その声に心臓が飛び上がる。



「どうぞ」



スッと草壁くんが目の前の襖を開ける。
そして視界に入ったのは紛れもなく…




「…久しぶりだね、…茉耶」

「…!」



雲雀くんだった。





「、雲雀、くん」



ドクン、ドクン


心臓が変に高鳴る。

…髪伸びたね、雲雀くん。
声も少し低くなって…大人っぽくなった。




「、っ」



ああ、駄目だ。
雲雀くんのことをまともに見れない。

だって、見れるわけないじゃない。


私が雲雀くんから目を反らしていると、雲雀くんは言った。



「まぁ適当に座りなよ。茉耶、一人で来たの?」

「……」



雲雀くんはそう言いながらさりげなく雲雀くんと向かいになる座布団に座るように勧める。

だけど私は座るつもりなんてない。

それに一人で来るに決まってる。
普通お見合いとくれば親がいて当然だ。


だけど私はーー…




「うん、一人で来たよ。だって私ね、



…お見合いを断るつもりで来たから」


「…!」



お見合いを断るつもりで来たんだから。

そう言うと雲雀くんは驚いたように目を見開いた。




「っ、何それ?ならなんで承諾なんかしたの。君の父親からそう電話が来たんだけど」

「それは勝手にお父さんがしたこと。

…とにかく私は雲雀くんとお見合いなんてしない。
だいたい私の性格は雲雀くん知ってるでしょ?…恋愛なんて興味ないの」

「………」



雲雀くんは苛つきながら顔を歪めていたもののやがて黙り込む。


ああ、もう早く帰りたいよ、帰らせてよ。


これ以上…雲雀くんの側にいたくないのに。




「だから私帰…「じゃあさ、決めてくれない?」、は?」



帰るね、と言おうとするとそれを遮られた。

決める?何を決めるの雲雀くん。

そう思っていると、雲雀くんは意味の分からない二択を言ったのだ。






「僕とお見合いをするか、風紀財団で秘書をするか選んでよ」


「は…?」




一瞬私の中の時が止まる。

え、何それ。
意味分かんない。

雲雀くん、あなたは一体何がしたいの。



私はしばらくその質問に答えられずにいた。




prev - next

[しおりを挟む]

back



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -