恋、なんて | ナノ
「…好きです、成瀬さん!」
「………」
高校時代。
人生何度目の告白だっただろうか。
「だから俺と付き合って…」
「あのさ、」
「!何?」
「私のどこが好きなの?」
そう聞くと私に告白してきた相手はみんな一瞬戸惑う。
そしてみんな全く同じことを言う。
「どこって…いや、すごく可愛いし…」
「…それだけ?」
「え…」
「、はぁ」
なんなの、一体。
どいつもこいつも同じこと言って。
見た目?
…そんなの恋愛になんか必要ない。
「…ごめんね、私あなたのことよく知らないから」
「そ、そんな…!」
だから私も決まりきった言葉で返す。
簡単に言えばこう言って告白を断る、それだけだ。
「じゃあ1日俺と付き合ってみてそれで…!」
「…しつこい」
こういうしつこい人がいれば私はこう言ってその場を去った。
これが私の高校時代。
普通に比べればなぜかよく告白をされては断る。
これの繰り返しだった。
告白してくる奴に「私のどこが好きなの」と聞けば必ず「見た目」と言う。
…くだらない。
恋愛なんてくだらない。
恋なんてくだらない。
何もかも見た目で決める奴は、イメージと違ったら別れる。
…これの繰り返しだもの。
だから私は
恋なんて、絶対にしない
そんな高校時代から軽く5年は経った。
今の私は適当な会社に就職してはそこそこの給料をもらい、一人暮らしをしている。
何年か経った今でも就職先やなんかしら関わりある人にはなぜかやっぱり告白されることが多い。
もちろん、断っているけど。
ま、私も女であるからこれでもずっと独り身は嫌だななんて思っている。
けど恋愛なんてする気はない。
そんな私を心配しているのかなんなのか、お父さんからある話が出てきたのだ。
「…お見合い?」
「そうだ、茉耶。見合いをしてほしいんだ」
実家に呼ばれたので帰ってみると突然、お父さんからこう言われたのだ。
お見合い?
…そんなの私がするわけない。
「お見合いなんてしたくない」
「そう言うなって…。このままじゃお前一生独身だぞ」
「………」
確かにそうなんだけど。
そうなんだけどさ。
それでもお見合いなんてしたくない。
会ってすぐに恋愛関係に発展するなんて私からすればこの上なくありえない話だ。
「頼むよー…。
…お、いいこと考えた!じゃあせめて相手の方と会うだけ会ってくれ!それで嫌なら断ってもいいから、とにかく会ってみるだけは…」
「…はぁ…」
頼む!と言って頭の上に手を重ねて頭を下げるお父さん。
…娘にこんな姿していいのか。
…お父さんの言いたいことは分かる。
いつまでたっても恋愛しない私のことを心配してくれているのだろう。
そんな心配、してくれなくてよかったのに。
くだらない恋愛なんてする気はないんだから。
そうは思っても必死になっているお父さんを見るとなんだか良心が痛む。
…私のこと考えて言ってくれたんだもんね。
だから私は
「分かったよ。会うだけね?」
「!茉耶…!」
とりあえず肯定の返事を返したのだ。
最も、会うだけだけど。
こうして、私はお見合いをすることになった。
「…それで?相手の人はどんな人なの?」
「それはな…」
しかしお見合い相手の名前と写真を見た瞬間、私はこれ以上にないくらいないの驚きを覚えた。
「…なんで、」
その理由は
「どうして…
雲雀くんなの」
そのお見合い相手が高校の時の同級生の雲雀くんだったからだ。
ねぇ、なんで雲雀くんなの。
「……嫌だ」
やだよ、雲雀くんとお見合いなんか。
私、雲雀くんのことーー…
大嫌いだったんだから
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