日常編 | ナノ



私が並盛中(略して並中)に転入してから早数日が経った。

なんだか今日は騒がしい。
どうやら新たな転入生が来るみたい。

並中って転入生が来やすいのかなぁ。






そんなことを思っていたらすぐに朝のホームルームが始まっま。
そう、今はその転入生の紹介をしている。



「イタリアに留学していた獄寺隼人くんだ」



どこかで見覚えがある気がする。

綺麗な銀髪に緑色の目…。
いや、でもやっぱり思い出せないから気のせいだろうか。

そう思って深く考えるのはやめることにした。



「ちょ…かっこよくない〜?」
「帰国子女よ!」



周りの子達はみんなこの転入生くんが気に入ったようだ。
黄色い声をあげて頬も染めている。

京子もニコニコ微笑んでいた。
さらに私が転入生くんのことを見ていたことでツナはショックを受けていたなんて知らなかった。



「(ちっくしょー感じ悪いなーあの転入生…!)」

「え?」



そんな時、転入生くんと目があった。

いや、違う。
転入生くんはツナのことを見てる。…ものすごく睨みながら。

それに驚いて思わず声をあげてしまった。



「な、なんだよ〜〜!」



するとなんと転入生くんはツナの席まですごい勢いでやってきてツナの机を蹴ったのだ。

なっ、何この人。
なんでツナを…?ありえない。



「ねぇ、転入生くん」

「…あ?何だよ、お前」


そう思ったは自分の席を立ちあがって転入生くんに声をかける。
転入生くんは苛立っていたけど…ごめん、それより私の方がお怒りだ。



「何でツナの机蹴ったの!?意味分かんない!
ストレス発散したいなら自分の顔でも机でも殴れば!?」



明らかに身なりは不良の転入生くん。
そんな相手に何してんだ、私は。

だけどこの時はそんなこと思う余裕もなくて。



「(杏〜!!この転入生に何言っちゃってるの!?)」


ツナは青ざめた顔をし、クラスメート達はざわざわとし始める。
京子は心配したような表情で、花は少し呆れたような目で私を見ているようだ。

すると少し黙っていた転入生くんが怒鳴りだした。



「なんだとてめぇ!ふざけんじゃねぇぞ!」

「だってあなたが悪いんで「杏!もういいから!大丈夫だよ!」、ツナ…」

「おい、獄寺は自分の席につけ!」



私はツナから止められ、転入生くんは先生にそう言われ最後に舌打ちしてこの場は終わった。


転入生くんにメロメロになっている女の子、いっぱいいるけど私にとって最悪な印象だった。









休み時間になってツナはどこかに行ってしまい、私は京子と花といた。



「にしても杏、あんた馬鹿ね」

「?何のこと?」



花にいきなりそう言われて軽くショックを受けたが何のことだかさっぱりだ。
だから聞き返すと花は呆れたように言う。



「何で不良転入生に喧嘩売ってるのよ、負けるに決まってるでしょ…」

「だってあの人ツナの机蹴ったんだよ!?有り得なくない!?」



あぁ、そのことか。

…また怒りが出てきそうだ。
もう本当ありえないよ、あの人!



「そりゃそうだけど…。
ほんとあんたって本当怖いもの知らず。ねぇ、京子?」

「うん…。杏よくあんな事言えたね?
…あ、ツナくんと獄寺くんだ」

「え?」



京子がふと窓の外を指して言った。
窓から見た場所は中庭だ。

確かに京子の言うとおり、ツナと獄寺が中庭で向き合っていた。



「なんで…!?」



すると獄寺はなんとどこからかダイナマイトを手に持ち、ツナを攻撃したのだ。

もしかして…!?



「…ごめん、ちょっと行ってくる!」


「え、杏!?」




ある予想がついた私。
それは転入生くんがマフィア関係者だとい うことだ。

私は京子の声にも反応せずすぐに中庭に向かおうとした、が…



ドンッ



「す、すいません!」


急いで走ってしまったため、誰かにぶつかってしまった。

急いで謝り、すぐに中庭へ行こうとしたのだけど呼び止められしまう。



「ねぇ」

「…!」



どこかで聞き覚えのある声だな、と呑気に思っていた。
だけどはっと気づき、その呑気さは呆気なく消えていってしまった。
自分の顔が青ざめていくのが分かる。

学ラン、黒髪、美少年、トンファー…これで思い出すのは十分だ。

そう、この人は


初めて並中に来た時にすごく怖い思いをした元凶の人だからだ。



「あ、あ、あの……」

「ワオ…誰かと思えばこないだ不法侵入で入ってきた草食動物じゃないか。
そういえば君転入生なんだって?君から会いに来てくれるとは光栄だね」


そう言いながらトンファーを構えてくるこの人。

や、やばいどうしよう。
でも今の私はそれよりもツナ達の事の方が気になっていたので



「す、すいませんでしたぁああ!ごめんなさい!」



謝って、全速力で逃げた。

途中まで追いかけたけど、なんとか撒いたようだ。




その時、この学ラン少年はかなり驚いた後、怪しく微笑んだ。



「2回も僕から逃げるなんて…。
次はないと思いなよ、柚木杏…」



そんなつぶやきは誰にも聞こえなかった。



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