■おまけ@ ブラッドリーが見にきた

「おー、こうして見るとやっぱでけえな」
「どうせすぐ出ていくのに、こんな立派なベッドを用意させて……」
「なんだよ、俺がけしかけたんじゃねえぞ。あの王子がやりたくてやったことだ」
「でも」
「それに、『すぐ出ていくから』なんなんだよ。出ていくとき、持っていきゃいいだけの話だ。どうせまた二百年くらい、同じベッド使ってんだろ?」
「いや、今のは……まだ百五十年くらいのはず」
「そんなもん誤差だ、誤差。あのベッド、もう替え時だろ。軋みがやべえじゃねえか」
「そう? 確かに寝返り打つと軋むけど、そこまで酷くはないよ」
「本気で言ってんのか? 部屋の外まで音が響いてたが」
「ええ? 嘘だ。話盛ってない?」
「盛ってどうすんだ、こんな話。とにかく、惜しいと思うならこのベッドは持ち帰れって」
「んー……」
「悩むな。この俺様がちゃんと、てめえの寝室に合いそうなやつを選んでやったんだぜ」
「まぁ……合うなとは、思った」
「だろ?」


「ベリルちゃん。さっきの話聞こえちゃったんだけど……本当にブラッドリーちゃんとはなんでもないの?」
「お二人が何を考えてるか知りませんが、あいつ、うちの間取りから各部屋の装飾までほとんど把握してると思いますよ」
「えっ……やっぱり付き合ってた?」
「そうじゃなくて。家捜しくらいするでしょう、盗賊なんだから」




■おまけA ミスラが押しかけてきた

「……なんでミスラがいるの」
「あなたのベッドに興味があって」
「だからって普通、人のベッドに勝手に寝る……?」
「話に聞いた通り、広くていいですね、これ。俺がのびのび寝られます」
「あっそう。帰って」
「今日はここで寝てみようかな」
「なんで? 帰って」
「寝たかったら隣に寝ても良いですよ。このベッド、なかなか広いので」
「我が物顔で言うんじゃない。それは私のベッド──うわ、ちょっ、引っ張るな!」
「よいしょ」
「痛っ、急に何なの、重……っ!? 腕のせないで」
「……」
「いや、なんで体重かけ……待って、潰す気? 自分の体格考えな、こら、脚までのせるな!」
「抱き枕を部屋に忘れたんですよね」
「知るか! さっさと部屋に帰ればいいでしょ」
「あなたの抱き心地、意外と良い感じですよ。抱き枕より温かいし……」
「は……、うそ、まさかこのまま寝るつもり? やだ、冗談じゃない、絶対嫌だよ」
「……」
「こら、聞け! やだってば! この……《ヴィアオプティムス》!」
「うわ、危な……。《アルシム》」


「おい。……そりゃどういう状況だ」
「あれ、ブラッドリー、どうしました? なんか怒ってます?」
「隣の部屋がうるせえからだ。とりあえず外に出ろよ。俺がてめえを寝かしつけてやる」
- ナノ -