空って何処までも続いていて、なんか壮大すぎて時々…怖くなる。


今日は部活が休み。
早く帰って、チビ達と遊ぼう。そんな事を思いながら歩いていたら、赤也に呼び止められた。

「おぉ赤也」
「ま、丸井先輩!…い、今帰りっすか」
「何だぁ…?やけに慌てて…ッ!!もしや、真田の鉄拳に俺を巻き込む気じゃねぇだろうなッ!!赤也!巻き込むのなら仁王にしろ、仁王に!!!」

赤也に関わるとろくな事がねぇ。
真田の説教に巻き込まれるし…
柳からの小言も聞かされる。

ま、まぁ…一番の恐怖は、幸村君からの無言の圧力!!って……

幸村君、か…

「違いますよッ!!そんなんじゃ無いっす」
「…ならなんだよ」

赤也の俺への用事。
何となく検討がついてきたぜ…。

「先輩、今から何処行くんすか」
「家帰る」
「やっぱりっすね!、幸村部長のお見舞いに行くの…今日は先輩の番っすよ?」
「…」

俺は幸村君のお見舞いに1人で行った事がねぇ。
真田達と一緒なら何度もある。

「な、なぁ赤也!一緒に行かねぇ!?」
「無理っすよ!用事あるんすから!それに…この前、幸村部長が呟いてたんすよ。『そういえば、ブン太って1人で来てくれた事ないよねー…ふふふ…』って」
「…」

顔を青くして訴える赤也。
これは、ただ事じゃねぇ。
もし行かなかったら…
考えるだけでも恐ろしい。

「俺達の命かかってるんすよぉ!行ってきてください!」
「わ、分かったから!背中押すなよぃッ」


赤也が駅まで監視してくっから、「ちゃんと行くっつーの!」と言って追い払った。

「ったく…あいつ用事あるんじゃねぇのかよ」

病院方面の電車に乗る。
やべー…なんか既に緊張してきた。

(ガム…ガム噛んどこ)

真田達と行ったと言っても、結構前の事だったりする。
病院内だと携帯があんま使えねぇから、連絡もしてない。
部の報告とかは真田の役目だし。

「はぁ…」


正直言うと、幸村君に会うのが怖い。

…まぁ色んな意味で。

弱々しく…
決してそうは見えないけど、弱々しく笑う幸村君を見るのが怖い。
そんで、幸村君がよく居るスポットの屋上。そこから見える澄んだ広い空は更に怖い。

全部吸取られてしまいそうで。

(はっ、んな事思うなんて…厨二病かっつーの、俺)

いつか…幸村君も消えて…

(いやいやいやいや!!!何思ってんだぁ!?)

首を左右に大きくふる。
いきなりの行動に、隣りに座っていた人から冷ややかな視線をくらう。

くだらない事考えているうちに、いつの間にか駅に着いていた。

「やべっ!降りねぇと」


徐々に、一歩一歩
幸村君の居る病院へ歩き出す。




「失礼しまーす…」
「はい。…あら?丸井君」
「あ!こんにちは」

幸村君の病室に入ると、幸村君のお母さんの姿があった。

…肝心の幸村君がいない。

「あの…幸村君は…」
「お見舞いに来てくれたのね!有り難う」
「い、いえ…」

流石親子。幸村君みたいな、綺麗な笑みを浮かべるおばさん。
すみませんでした...
ついさっきまで来るの嫌がってました。

「精市なら、風に当たってくるって言って、屋上に行ったわよ」
「あ、有り難うございます」


風に当たるって…
もう寒いだろぃ…

俺は屋上へ向かった。

「ほらな」

屋上に行くと、冬の風がブワァッと当たる。
さみぃよ、幸村君。


「あれ…ブン太?」
「幸村君…お、お久し振りぃ」
「うん。ほーーーーんっと、お久し振り」

怖いよ、幸村君。

寒い中、いつものベンチに座る。

「幸村君、こんな寒いのに大丈夫なのかよぃ」
「うん。ちゃんと暖かくしてるから」
「な、なら良かった…」
「心配してくれて有り難う」
「いえいえ…」
「…」
「…」

沈黙。
やべぇ…会話がねぇ…。

目の前の空が、段々赤くなってゆく。

「…夕暮れか」
「俺さ…夕空、好きなんだ」
「え」
「と言うより…空を見るのが好きだ。
あは…ごめんね、なんか急に」
「いや!…何で幸村君は空が好きなんだよぃ」
「なんか、学校の出来事とか部活の時とか…
皆との楽しかった事を思い出すんだよね。
ほら、空に壁は無いでしょ?
空を見ると、…皆と同じ気持ちになれる気がしてね。
同じ景色を見ているからかな」
「ふーん・・・・」

『同じ景色』か。
そうだな。
見ている未来は同じでも、現在の見ている景色は…
きっと違う風に、幸村君には映っている。

「ブン太は、空が嫌いなんだろうね」
「え!!!な、何で分かったんだよぃ!」
「勘」
「ぇ・・・・・。んー…ま、まぁ俺は嫌いってゆうより…『怖い』かな」
「怖い?何で」
「わ、笑うなよぃ!?」
「笑わないよ」

「なんか、空に...大事なもん全部もってかれちまいそうで…」
「…」

幸村君をチラッと見て、後悔した。
幸村君は必死に笑いを堪えている。

「幸村君…」
「ごめんごめん…でも、その気持ち分からなくもないかな」
「だろぃ!?
でも、幸村君の気持ち分からなくもない!」

グイッと幸村君に顔を寄せる。

「ブ、ブン太?」
「だから、少しだけど…空が好きになったぜぃ」
「はは、そっか」

ほら!この笑顔が見たかった。
幸村君の、この綺麗な笑顔。

「ザ・幸村君スマイルだな☆」
「な、何それ」
「俺の元気の源だろぃ!」
「あはは変なの」

馬鹿だな、俺。
何が幸村君に会うのが怖いだよ。
こんなにも【好き】で溢れて、超幸せじゃねぇか。

「んじゃ!俺、そろそろ帰るな」
「うん。…ブン太、来てくれて有り難う」
「俺こそ、有り難うだよ。幸村君」
「?」
「また来るぜぃ!」
「…あ、待って」

帰ろうとベンチを立った時、幸村君が俺の腕をグイッと引く。
そして頬に触れるだけの、優しいキスをした。

「ゆゆゆゆ幸村君!不意打ちは」
「あと、もう一つ空を見るのが好きなのはね、
この空が続く果てには大好きな人が待っているから」
「幸村君...."大好きな人"って...」
「そこ言わせるつもり?」
「いいえ!!」

ニコニコ笑う幸村君。
こ、怖いよぃその笑顔。

「幸村君…」
「うん?」
「俺、空見るよ。だって幸村君に続いているんだろぃ?」
「うん。そうだよ」
「…少しじゃねぇや。俺、空が大好きになったわ」
「アハハそっか」


帰りの電車。
窓から、ずっと空を眺めた。

前見た時の気持ちと全然違う。

「…大好きな人へ、大切な人へ続いている」

空を見るだけで、なんて幸せな気持ちで溢れるんだ。



この空が続く果てには 大好きな人が待っている
思いは幸村君が大好きって思いは…今‐‐… ここにある。





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ブンちゃんの「大切な人へ」をBGMに...。
この曲は立海R陣、皆へ向けての曲だ!!!!
と、勝手に解釈しております(´-ω-)




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