先輩が部活を辞めてから活気がなくなった気がする。先輩達は何も言わない。先輩がマネージャーを辞めたいって言った理由さえ俺にはわからなかった。だって辞める1日前までは普通に部活に来てたし、足を痛めてる俺のマッサージもしてくれたのに。いきなり辞めてしまうなんて納得出来なかった。先輩がいなくなってから部室は汚くなる一方だ。コートの中で溜息を吐いたら真田副部長にバレて怒鳴られた。今日の部活は真田副部長に怒鳴られることばかりだった。練習が終わって部室で買い置きしていたパンを食べていると丸井先輩が俺が食べていたパンを寄越せと煩い。仕方ないので半分千切って丸井先輩にやった。
「最近元気ねぇなあー赤也」
「そうっスか」
「あいつのことだろぃ」
「‥先輩なんで辞めちゃったんスかね」
丸井先輩は俺があげたパンをジャッカル先輩に渡していた。どうやら不味かったらしい。ジャッカル先輩は嫌そうにパンを食べている。丸井先輩は棚からノートを出して来て、それを俺に投げた。
「何するんスか!」
「まあ読んでみろって」
言われるがままに俺はノートを開いた。そこには先輩の綺麗な字で、俺たちのことが沢山書かれてあった。始めからぺらぺらとノートを見ていると毎日事細かに書かれていたのがある日から急に書いていないのに気が付いた。その日付は先輩と最後に会った日の1年前だった。
「これって」
「柳があの子と付き合った日から書かなくなってんの」
そう言えばそうだと思い、ノートを綴じる。だけど俺にはどうしてその日から先輩がノートを書かなくなったのかわからなかった。頭にはてなマークを浮かべているのに気が付いたのか丸井先輩は溜息を吐いて俺の頭を殴った。
「いってぇ!」
「にっぶいなあお前」
丸井先輩はそう言うと着替えだした。丸井先輩に殴られた所を押さえていると部室のドアが開いて柳先輩が入ってきた。俺を見て何があったのかわかったのか柳先輩は澄ましたように笑った。俺は柳先輩にそのノートを渡した。
「なんだこれは」
「先輩が書いてたノートらしくて」
柳先輩がノートを開くと同時に丸井先輩が俺たちの方を見た。すると血相変えたようにノートを柳先輩から奪い取った。
「何してんだよ赤也!」
「えっ?」
「柳、これはさ、その‥」
柳先輩は丸井先輩からノートを奪い返した。丸井先輩はばつの悪そうな顔をしていた。俺は自分が何をしたのかわかっていなかったし、先輩のノートを柳先輩が見て何がいけないのかもわかっていなかった。柳先輩はぺらぺらとノートを捲っていく。丸井先輩はもうそれを止めることはしなかった。そしてあのページで止まった。
「そういうことだったのか」
柳先輩はそう言うとノートを俺に渡してすぐに着替え始めた。そして着替え終えるとすぐに部室から出て行った。
「あーあ。俺知らねえからな」
丸井先輩はそう言って部室から出て行った。ジャッカル先輩が俺の肩をぽんと叩いた。柳先輩が言った言葉の意味すら俺はわからなかったんだ。
Title:思春期